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改正臓器移植法に基づいて初めて、脳死と判定された15歳未満の子どもから臓器提供を受けた移植手術が行われた。臓器提供者になったのは10代前半の男の子で、事故で重いけがをし[記事全文]
ファンが待ち望んだ球春がやってきた。プロ野球がセ・パ両リーグで同時開幕し、優勝をかけた長い戦いが始まった。選手たちには、高度な技と力で、私たちを沸かせてほしい。テレビや[記事全文]
改正臓器移植法に基づいて初めて、脳死と判定された15歳未満の子どもから臓器提供を受けた移植手術が行われた。
臓器提供者になったのは10代前半の男の子で、事故で重いけがをした。心臓が10代の男性に移植されたのをはじめ、肺や肝臓、腎臓なども各地の患者に移植される。
臓器提供する家族は常に厳しい決断を迫られるが、子どもの突然の死に直面した両親にとってはとりわけ、つらい決断だったに違いない。その重い決断を尊重し、臓器移植を定着させていくためには、課題はなお少なくない。
何より大切なのは、臓器提供までの経過をわかりやすく説明する透明性だ。子どもの場合はとくに、虐待ではないことの確認もいる。
改正臓器移植法は、本人が拒絶していない限り、提供の意思が不明でも家族が同意すれば、脳死判定後に臓器の提供ができるようになった。旧法では15歳未満の子どもからの提供はできなかった。
それだけに、本人が拒絶していないことの確認や、家族が臓器提供について十分な情報を与えられたうえで、自由な意思で判断したことの保証が重要だ。こうした過程を可能な限り明らかにする必要がある。
今回、家族もできるだけの公開を考えたという。だが日本臓器移植ネットワークは、家族のプライバシーを理由に、少年の脳死の判定をした病院がどこにあるか、また、同意を得るまでの時間的な経過や病院内の倫理委員会の審議など、詳しい過程を明らかにしなかった。
プライバシーは守らなければならない。
しかし配慮しつつ、臓器提供にいたるまでの経過を明らかにすることはできるはずだ。家族の葛藤もふくめて伝えてこそ、移植への理解が広まるのではないか。
昨年7月の法改正からの9カ月で、大人での脳死からの臓器提供は41例にのぼる。うち38例が家族の承諾によるものだ。以前は年間10例程度だったことを考えれば、大幅な増加である。
それに比べると、子どもの場合は難しい。脳死判定もそうだし、臓器提供に対応できる医療機関も限られる。技術的な態勢の整備はもちろん、信頼されるシステム作りが欠かせない。
移植件数の急増もあって、厚生労働省に置かれた臓器移植に関する検証会議の作業は滞っている。少なくとも子どもの例は優先して検証し、その結果を示すことが信頼につながる。
ファンが待ち望んだ球春がやってきた。プロ野球がセ・パ両リーグで同時開幕し、優勝をかけた長い戦いが始まった。
選手たちには、高度な技と力で、私たちを沸かせてほしい。テレビやラジオの前にも、声援を送る人々が無数にいることを思いながら。
仙台に本拠を置き、地域密着を掲げてきた楽天は、特別な思いを抱いての開幕だ。球場は震災で大きな被害を受けた。家族が被災した選手もいる。
選手らは左袖に「がんばろう東北」のワッペンをつけて不屈の戦いを誓い、開幕から2連勝を飾った。被災した人々は復興への自らの思いを重ね、彼らを応援していくだろう。
シーズンを前に、曲折を重ねた春だった。震災の影響で節電が求められる中、開幕時期とナイター開催をどうするか。セ・リーグは早期開幕にこだわり、判断を二転三転させた。
最終的には、先に延期を決めたパ・リーグと足並みをそろえるよう求めた文部科学省や、選手会に押される形になり、両リーグ同時開幕となった。
セの経営者が興行を優先し、早期開幕・ナイター開催を押し通そうとした経緯は正直、うんざりさせられた。
それでも、開幕延期とナイター自粛を当初から訴え、被災した人々の心情に寄り添おうとした選手会の姿勢は、ファンや世の中が評価している。
開幕を遅らせた分、全球団にとって厳しいシーズンになる。夏場の電力供給不足も懸念される。急きょ、ナイターからデーゲームへの変更を求められるときがあるかも知れない。だが、とにかく非常時だ。球界全体で臨機応変に対応する意識を持っていてほしい。
球界は昨年、横浜の身売り騒動で揺れた。地上波のテレビ中継も年々減り、安泰ではない。
しかし、今年は日本ハムに斎藤佑樹投手が入団し、大きな注目を集めている。日ハムファンならずとも、甲子園や神宮を沸かせた斎藤投手は気になるところだ。楽天・田中将大投手との投げあいも今から楽しみだ。
巨人には、斎藤投手ら同世代の存在をばねに成長してきた剛腕・沢村拓一投手が入った。
例年以上に、プロ野球が熱くなりそうなシーズンなのだ。
震災後の自粛ムードも徐々に和らいできた。野球に限らず、スポーツや文化活動の過度な自重は経済の停滞も招く。
プロ野球もある、日常の暮らしが少しずつ戻りつつあることに感謝しながら、彼らの一投一打を堪能したい。