政府の復興構想会議が立ち上がった。菅直人首相肝いりの会議だが、被災現場の実情を考えれば、悠長な感じも免れない。当面の救援・復旧策を中長期的な復興につなげていく工程表が必要だ。
首相は先の会見で被災地の復興について「山を削って高台に住宅をつくり、漁港まで通勤する」とか「植物、バイオマスを利用したエコタウン」を目指す考えを表明した。創設した復興構想会議は、首相の意向も踏まえて復興計画の青写真をつくる。
復興にグランドデザインが必要であることに異論はない。だが、どうも言葉ばかりが踊って足元が定まっていないのではないか。それは人選にもうかがえる。
五百旗頭真防衛大学校長を議長に有識者や岩手、宮城、福島各県知事らを会議メンバーに選んだが、霞が関ににらみを利かせる役割の人物が見当たらない。
先例となる阪神大震災後に設置された復興委員会では、下河辺淳元国土事務次官を委員長にして故・後藤田正晴副総理が入り、霞が関の各省庁と連携した。今回は政治主導を意識したのかもしれないが、霞が関は「お手並み拝見」と冷ややかに構えるだろう。
それでなくても、福島第一原発の放射能漏れや震災被災者対策では、すでに多くの対策本部や会議が林立している。
仮設住宅一つとっても、どこにどれだけ作るかは復興計画と密接に関係する。限りがある平地の公有地を仮設住宅で埋め尽くしてしまえば、新たな施設をつくる余地がなくなってしまう。
地元の立場に立てば、いま現実に動きだしている緊急の救援・復旧策と、これから検討する中長期の復興計画は無駄なく効率的に連携していなければ困るだろう。
そこは被災県の知事たちが地元の声を議論に反映させると期待したい。ただ、いずれカネの工面と使途について権限を握る霞が関との調整が必要になるはずだ。
菅首相の一連の危機対応に対して、民主党内はもとより西岡武夫参院議長からも厳しい批判が出ている。脇に置かれた霞が関が抵抗した場合でも、会議が打ち出す復興策を断行する指導力が菅首相に残っているだろうか。
それともかけ声とは裏腹に、復興策自体が小ぶりになってしまわないか。率直に言って心配だ。
被災現場では住居や雇用など切迫した課題が山積している。目の前の危機を乗り越え、明日につなげる堅実な議論を望む。
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