HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 18116 Content-Type: text/html ETag: "c05bbf-46c4-1530d0c0" Cache-Control: max-age=2 Expires: Mon, 11 Apr 2011 02:21:08 GMT Date: Mon, 11 Apr 2011 02:21:06 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年4月11日(月)付

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 「帰りなん、いざ。田園まさに荒れなんとす」。名高い詩句に心境を託して、当時の美濃部東京都知事が3選への不出馬を表明したのは1975年2月だった。ところが1カ月後、前言を翻して世間を驚かす▼都政をこの人物の手には渡せない、というのが理由だった。石原現都知事のことだ。このとき石原氏は敗れる。それから36年、都政を渡せる人物がいないと思ったか、今度は石原さんが4選に名乗りを上げた▼3期目が「最後のご奉公」のはずだった。田園ならぬ田園調布のご自宅へ「帰りなんいざ」だろうと思われていたが、――石原氏が出馬表明した3月11日、小欄をここまで書いたところで大地が揺れた。日常は途切れ、それまでとは異なる時間が流れ始めた▼案の定、選挙は盛り上がりを欠いた。首都の知事選といえば、日本の選挙では米大統領選にも似た「民主主義の祭り」なのにである。告示後の川柳欄には〈どさくさで都知事が決まるような気が〉とあった▼結果は、高齢も多選批判も、天罰発言への顰蹙(ひんしゅく)もかわして、石原氏があっさり勝ちを決めた。この非常時、有権者は新顔に賭ける踏ん切りがつかなかったかも知れない。国難という世の空気が強面(こわもて)を引き立て、かくて悠々と石原都政は続く▼自民は御年78の石原さんをかつぎ、民主は独自候補を立てられなかった。1カ月前、地震がなければ小欄は両党の「人涸(が)れ」を突くつもりだった。この統一選、震災後を担う若い力が各地で羽ばたいていればいいが。

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