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4月8日付 編集手帳

 作家、城山三郎さんの遺稿は小欄で取り上げたことがある。亡き妻・容子さんに宛てた“恋文”ともいえる文章は、のちに刊行されたので題名をご存じの方もあるだろう。『そうか、もう君はいないのか』◆家族を亡くした経験をもつ人ならば、喪失感が時間差攻撃で訪れることを知っている。葬儀を終え、遺品の整理を済ませ、日常の生活に戻りかけたとき、ふとした拍子に思い知る「そうか、もう…」。これがこたえる◆被災地の人々は不自由な生活がつづくなかで、わずかずつながらも日常の落ち着きを取り戻しつつあると報じられている。肉親を(うしな)った悲しみが深まるのはこれからに違いない◆〈五十億のなかで、ただ一人「おい」と呼べるおまえ…〉とは城山さんの遺稿の一節だが、子供であれ、父母であれ、どの犠牲者も遺族にとって「五十億の中で、ただ一人」の人である◆多くは間仕切りさえない避難所で、その痛みに耐えるのかと思うと、気の毒でならない。せめて、ひと目をはばからずに泣くことのできる仮設住宅を全員に、一日も早く、と思う。心の空洞を涙で埋めたい夜更けもあるだろう。

2011年4月8日01時44分  読売新聞)

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