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天声人語

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2011年4月7日(木)付

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 筒井康隆さんの短編に「ヒノマル酒場」なる傑作がある。大阪のとある大衆酒場。長っ尻の常連に悩む女将(おかみ)は、客を笑わせて帰す一計を案じる。その頃、世間は通天閣前に降りたUFOで騒然としていた▼店のテレビが伝える映像を作り物だと思った客たちは、食を調べに訪れた宇宙人を面白半分に殺してしまう。記者が殺到する修羅場。女将に頼まれていた男がグリコの看板の姿で現れ、「ぱんぱかぱあん。閉店でえす」。ニュースの軽重は受け手が決める、という痛烈なメディア批判である▼あの津波もUFOのように、それまでマスコミが報じていた大小の出来事を記憶のかなたに押し流した。震災の陰で、当事者以外には「どうでもいいこと」になったニュースも多い▼大相撲の八百長問題はどうか。空前の不祥事とはいえ、誰かの生命財産を損ねたわけではない。そんな大衆心理に乗じ、日本相撲協会が「ぱんぱかぱあん」と強引に幕引きを図るなら、ファンは離れていこう▼八百長をしたとして処分された23人のほとんどが、不服ながら引退する。逆らって解雇となれば退職金が消え、生計に障るからだ。「相撲がなければただのデブ」。巨漢山本山の自虐が悲しい▼現役上位や大物師匠らの過去は問わぬまま、全容解明とするらしい。夏場所は興行ではなく技量審査として公開される。照明も展望も暗い国技館で、再開ありきの「どさくさ場所」。無料なら大人気だろうが、それを免罪符としては満員御礼の八百長である。

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