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4月5日付 編集手帳

 何年か前、新潟県内の公民館を訪ねた折、ロビーに飾られた色紙を見た。〈生きているということは/誰かに借りをつくること/生きてゆくということは/その借りを返してゆくこと――永六輔〉◆メモ帳に書き留めたまま忘れていた言葉を思い出した。日曜日に幕を閉じた春の甲子園“センバツ”(選抜高校野球大会)で、幾度か目にした光景がある◆中盤の5回が終わると、グラウンドの整備が始まる。踏み荒れた土を整備員がきれいにならす。試合再開のとき、選手たちはベンチの前に整列し、引き揚げていく整備員に帽子を脱いで深々と一礼した…。今大会に始まった礼儀ではないのだろうが、大震災の直後である。野球のできる幸せに感謝する心が、見るたび、胸にしみた◆目にすることのなかった光景もある。優勝の瞬間、選手たちが人さし指を天に突き上げてマウンドに群れ集うおなじみの姿を、今年は見なかった。東海大相模(神奈川)ナインの抑えに抑えた喜びの表現が印象に残る。これもまた〈生きているということは…〉の心であったろう◆見た光景も、見なかった光景も、忘れ得ぬ春である。

2011年4月5日01時14分  読売新聞)

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