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2011年4月5日(火)付

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避難所を出る―健康と復興のために

生き残った人たちの命と健康を、これ以上損なってはいけない。体育館など避難所での生活は限界に来ている。朝晩の冷え込みが続く被災地。まだ何万もの人が、学校や公民館など公共施[記事全文]

検察改革―刑事司法の将来像探れ

大阪地検特捜部の不祥事を機に設けられた「検察の在り方検討会議」の提言がまとまった。注目された取り調べ過程の録画については、14人の委員の意見が割れ、最大公約数の表現に落[記事全文]

避難所を出る―健康と復興のために

 生き残った人たちの命と健康を、これ以上損なってはいけない。体育館など避難所での生活は限界に来ている。

 朝晩の冷え込みが続く被災地。まだ何万もの人が、学校や公民館など公共施設の硬い床に毛布を敷いて寝起きしている。

 せきが止まらない、顔色が悪い。そんな高齢者が目立つ。

 眠れない。風呂に入れない。汚れたトイレに行くのが嫌で、排尿・排便を我慢する……。

 こうした生活でためこんだストレスと疲れにより、高血圧や肺炎、胃腸炎を起こす人が増えている。

 もともと東北は、医師が不足していた地域だ。今回の震災で、病院や診療所の多くが休診を余儀なくされている。

 行き場を失った患者は、軽症の人も含め、残った中核病院に集まる。このため、がん治療など本来、担うべき高度医療がストップしてしまう。

 被災地には全国各地から、医師や看護師、保健師らが応援に入り、避難所での救護活動などを支えている。

 だが、状況の根本的な解決には、きれいな水と満足な食事、温かい寝床、清潔なトイレといった生活環境が不可欠だ。

 何万という仮設住宅をつくるには時間がかかる。健康を第一に考えれば、一時期、住環境が整った場所に、遠方でも移ってもらうのはやむをえまい。

 その方が、残った人たちが復興に安心して集中できるというメリットもある。生活支援と復興を、被災現場で並行して行うのは容易ではないからだ。

 この「2次避難」の受け入れに、北海道から沖縄まで全国の自治体が手を挙げている。

 一方、被災者の間では、見ず知らずの遠方に移ることへの不安感から、近隣の自治体への希望が強い。

 だが、程度の差こそあれ、そこも被災地であり、インフラが損傷していたり、ガソリン不足に見舞われていたりする。

 自治体はこうした事情を、住民に率直に説明し、「復興のための協力を求める」という形で希望を募ったらどうか。

 当初、被災者に「自分だけが避難して楽をするわけにはいかない」という気持ちを持たせてしまった例もあるからだ。

 意を尽くして2次避難を説得する。自治体が担うしかない仕事だが、心のブレーキを外すには「いずれ住み慣れた地に戻り、生活を再建できる」という見通しを示す必要がある。

 被災者の不安に寄り添い、希望を持たせる。そんな自治体の取り組みを応援したい。

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検察改革―刑事司法の将来像探れ

 大阪地検特捜部の不祥事を機に設けられた「検察の在り方検討会議」の提言がまとまった。

 注目された取り調べ過程の録画については、14人の委員の意見が割れ、最大公約数の表現に落ち着いた。不当な誘導などを防ぐため運用と法整備の両面から可視化の範囲を広げるべきだとしたが、私たちがかねて唱えてきた「全過程の録画」にまでは踏み込まなかった。

 捜査への支障を心配する声は警察部内にも強く、即時実施はたしかに簡単でない。だが実現すべき目標として、もっと明確に位置づけて欲しかった。

 よほど大きな動機づけや外からの力が働かないと、捜査側と弁護側が対立したまま何も変わらない。それが日本の刑事司法の歴史だ。「あの機会を逃したのが悔やまれる」と振り返ることのないよう、国民一人ひとりが引き続き関心を持ち、監視の目を向ける必要がある。

 その意味で重要なのは、提言に盛られた「新たな刑事司法制度の構築」である。無理な取り調べをしなくても供述を引き出し、客観的な証拠を集められる仕組みを早急に整備する。そのための検討を「直ちに」始めるよう、提言は求めている。

 「可視化の見返りに、武器としてどんな捜査手法を導入すれば均衡がとれるか」といった発想にとどまってはならない。時代にかない、国民の法感情や正義感に沿う刑事司法をどう描くか。大きな視点から議論を深める必要がある。検討メンバーの人選と姿勢に注目したい。

 拙速は慎むべきだが、「のど元過ぎれば」でうやむやにしたり先延ばししたりするようでは信頼回復はおぼつかない。期限を切って結論をまとめ、まず一歩を踏み出す。その結果を見定め、手直しすべき点があれば手直しする。そんな勇気と柔軟な発想が求められよう。

 今回、検討会議は検事約1300人の意識調査を行った。驚いたのは、約4分の1が「実際の供述とは異なる特定の方向で調書の作成を指示されたことがある」と答えたことだ。

 別の証拠との矛盾を指摘され調べ直した例なども含まれるというが、検察が危機的状況にあるのを物語る数字だ。大阪の事件を個人の資質や力量の問題として済ませるわけにはいかないことを裏付けてもいる。

 人事、教育、組織などの見直しに着実に取り組み、「公益の代表者」という検察官の使命・役割を組織の隅々にまで浸透させなければならない。

 国民の視線を常に意識することから、再生の道は始まる。

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