東日本大震災は職場消滅から新卒者の内定取り消しまで、雇用全体を“破壊”した。原発事故と計画停電が追い打ちを掛けることは必至である。政府は強力な雇用創出策を早急に打ち出すべきだ。
「雇用情勢がようやく改善してきた中での大震災は正直に言ってショック。東京電力福島第一原子力発電所の事故などによる計画停電も景気と雇用を悪化させるのでは…」。厚生労働省幹部は落胆を隠せない。
二月の完全失業率は4・6%と前月比0・3ポイントも下がり二年ぶりの低水準だった。有効求人倍率は〇・六二倍と十カ月連続で改善した。だが巨大地震と大津波、原発事故は状況を根底から変えた。
東京商工リサーチの調べによると、今回の大震災で上場企業千百三十五社が被害を受けた。「一部・軽微」が30・1%、「営業・操業停止」が29・5%などで「原発事故影響で避難指示」を取り上げた企業も十八社あった。
労働者はもっと厳しい状況に置かれている。岩手、宮城、福島三県を中心に太平洋沿岸地域には水産業はじめ多数の製造工場、物流基地がある。八十万人を超える就業者のうち、数万人を超える人々が失業状態にあるとみられる。
先月下旬、政府は当面の雇用対策をまとめた。緊急支援策として雇用保険による失業手当を特例支給するほか、ハローワークの全国ネットを利用した広域職業紹介の推進、雇用調整助成金の活用による解雇防止などが柱だ。
だがこれでは不十分だ。被災者をがれき撤去から住宅、港湾、道路などの復旧事業に優先的に雇用したり、鳥取県のように半年とか一年程度、臨時の非常勤職員として採用するなど大胆な雇用創出策が不可欠である。
抜本的には二〇一一年度補正予算の中で大規模な公共事業を実行するとともに、被災企業の再建と国内投資促進のため税制優遇や金融支援を行う。さらに失業者救済など各種の特別立法を通じて復興を加速させることだ。
被災地では地元企業を中心に新卒者の内定取り消しが目立っている。津波で廃業に追い込まれたり事業再開のめどが立たないなど、やむを得ない事情がある。
その一方で東武鉄道と亀田製菓が大震災で内定取り消しを受けた新卒者を採用することを決めた。こうした動きがもっと広がることを期待したい。被災しなかった企業はこの際、一人でも多く若者を採用してもらいたい。
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