HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 18084 Content-Type: text/html ETag: "9c690f-46a4-90c10400" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 01 Apr 2011 20:21:43 GMT Date: Fri, 01 Apr 2011 20:21:38 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年4月2日(土)付

印刷

 福島の事故で、中部電力の浜岡原発に不安の目が向けられている。同じ太平洋岸の沸騰水型である。浜岡の名で思い出すのは、遠い夏の草いきれと鶏舎のにおい、大学の卒業研究で通い詰めた日々だ▼春に米スリーマイル島の事故が起きた1979(昭和54)年のこと。東海地震のリスクが言われる中で、浜岡の営業運転は4年目に入っていた。わが故郷静岡の原発は大丈夫かというのが、卒研の動機である▼題して「原子力災害をめぐる住民意識」。周辺の人々がどれほど案じているのか、100人に面談した。いずれ命にかかわる事故が起きると3割強が考えていたが、心配しても始まらない。悟りにも似た空気が集落に満ちていた▼住民の不安を「安全神話」で包み込み、原子力は日本の電力の3割を担う。釈然としないまま、生活者として甘受する自分がいる。福島発の電気が東京に回る現実に黙しておいて、したり顔で脱原発を説くつもりはない▼それでも地元の「裏切られ感」は分かる。福島第一は運転歴が浜岡より5年長く、地元2町は40年以上、財政や雇用で東電と運命共同体だった。原発城下町の落城である。安全を信じた町民が今、家に戻れない▼長い離散は地域社会を壊し、故郷が消えるかもしれない。電力を支えた人々に、これ以上の仕打ちはなかろう。恩恵に浴すことなく放射能にさらされた隣接市町も、肉親の捜索さえできない状況だ。その憤りを共有し、代替エネルギーと向き合う気力を奮い起こしたい。

PR情報