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4月1日付 編集手帳

 詩人のジャン・コクトーは語ったという。〈若者は安全な株を買ってはならぬ〉。堀口大学が随筆集『水かがみ』に書いている◆芸術の生命は「新しさ」にある。「新しさ」はいつも、危険な株からしか生まれない。フランス象徴派を代表する詩人マラルメも、20世紀絵画の祖セザンヌも、もとをただせば皆、危険な株を買って立った青年だったではないか――というのがコクトーの説くところであるらしい◆安全な株を買うことが漫然と“前へ倣え”に従うことを指すのならば、あてはまるのはこと芸術の分野に限るまい◆震災以降、業種によらず、企業は混迷と試行錯誤のなかにいる。計画停電などの影響で工場の操業はままならず、世の自粛ムードが消費に影を落とす。きのうまでのやり方を踏襲していれば安泰であった昔は遠ざかりつつある。“前へ倣わぬ”、危険な株をも買える人材がいまほど求められる時代はないだろう◆きょう社会人となる若い人に、堀口の歌を贈る。〈流れ星流れてよしや消ゆるとも瞬時は光れわれの命よ〉。暗く、不安に満ちて、星冥利に尽きる夜がつづく。存分に発光されたし。

2011年4月1日01時25分  読売新聞)

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