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3月31日付 編集手帳

 生まれてまもない君に、いつか読んでほしい句がある。〈寒き世に(なみだ)そなへて生れ来し〉(正木浩一)。君も「寒き世」の凍える夜に生まれた。列島におびただしい泪が流れた日である◆震災の夜、宮城県石巻市の避難所でお母さんが産気づいた。被災者の女性たちが手を貸した。停電の暗闇で懐中電灯の明かりを頼りに、へその緒を裁縫用の糸でしばり、君を発泡スチロールの箱に入れて暖めたという◆男の子という以外、君のことは何も知らない。それでも、ふと思うときがある。僕たちは誕生日を同じくするきょうだいかも知れないと◆日本人の一人ひとりがあの地震を境に、いままでよりも他人の痛みに少し敏感で、少し涙もろくなった新しい人生を歩み出そうとしている。原発では深刻な危機がつづき、復興の光明はまだ見えないけれど、「寒き世」は「あたたかき世」になる。する。どちらが早く足を踏ん張って立ち上がるか、競争だろう◆原爆忌や終戦記念日のある8月と同じように、日本人にとって特別な月となった3月が、きょうで終わる。名前も知らぬ君よ。たくましく、美しく、一緒に育とう。

2011年3月31日01時21分  読売新聞)

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