HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 30 Mar 2011 22:11:35 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:震災と統一地方選 自治を強くするために:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

震災と統一地方選 自治を強くするために

2011年3月31日

 国を挙げて東日本大震災の対応に追われる中、統一地方選が始まった。国民の誰もが社会的連帯感を取り戻している今は、自治を強くできる時でもある。

 いまだに被害の全容が分からず、原発事故が予断を許さない中での統一選となった。被災地では捜索と復旧が続き、不自由な避難所生活も長期になりそうだ。各都道府県は積極的に被災者を受け入れ、被災自治体に職員を派遣し行政機能の回復を手伝っている。復興支援では全国民が“当事者”で、日本中が選挙どころではないのが実情だろう。

◆防災の具体策聞きたい

 与野党間では一律延期を求める声も出たが、片山善博総務相は「任期を守るのは鉄則だ」と原則論を貫いた。選挙の実施が物理的に困難な岩手、宮城、福島三県の五十八件と水戸市長・市議選の計六十件が延期された。大津波で壊滅的被害を受けた地域もあり、最長六カ月とした期間の再延長など柔軟に対応すべきだ。

 十二知事選と五政令市長選に続き、一日に四十一道府県議選と十五政令市議選が告示、いずれも十日に投開票される。市区長・市区議選は十七日、町村長・町村議選は十九日告示、二十四日投開票だ。

 大津波の防災対策、原子力政策の今後−。有権者が今、最も問いたいことだろう。岩手県大船渡市の海沿いにある小学校の児童は、校舎二階から直接高台に避難できる非常通路を通って無事だったという。地元市議の要望を受けた市が昨年、四百万円で設置したものだ。

 こうした具体的で有用な防災・減災のアイデアが集まらないものか。選挙戦を通じて、候補者らの訴えに耳を傾けたい。

◆地域政党VS既成政党

 ことしの統一選は地域新党、とりわけ知事や市長が代表の首長新党が“台風の目”になるだろう。既成政党に代わる受け皿として、住民の期待も大きい。地方自治の在り方、国のかたちを変える実験でもある。

 橋下徹大阪府知事率いる地域政党「大阪維新の会」は府議選、大阪、堺市議選で過半数獲得を目指し「大阪都」の実現を期す。「日本が少し落ち着いてから」と統一選の延期を唱えていた橋下知事だが、「西日本にもう一つの首都機能が必要だ」と切り替えた。大震災を教訓とした一つの論点だ。

 一足先に終わった議会リコールに伴う出直し名古屋市議選では、河村たかし市長が代表の「減税日本」が第一党に躍進。学生、会社員、商店主…が議員バッジをつけ、当選一回の議長も誕生した。愛知県議選でも大村秀章知事の「日本一愛知の会」とともに過半数を目指すほか、静岡市長選をはじめ全国各地に候補を擁立した。

 清水勇人さいたま市長ら五首長による「埼玉改援隊」は各議員選で躍進を期す。元県議が率いる「地域主権・静岡」、元市議が代表の「京都党」など議員主導の地域政党も急増した。いずれも国政とは一線を画し、地域の自立を掲げる。名前の連呼ではない、政策本位の選挙戦に変えてほしい。

 地域政党に共通する視点は「議会を変える」だ。首長の追認機関にすぎない、何をしているのか分からない−と揶揄(やゆ)された議会を改め、首長と議会が牽制(けんせい)と均衡を保つ「二元代表制」を今度こそ機能させなければならない。

 一方の既成政党には「政党とは何か」をあらためて問い直してほしい。地方議員は最も住民に近いのに、なぜ首長新党が支持されるのか。政権争いに没頭し、住民を置き去りにしてはいなかったか。知事選では二大政党の推薦を拒む「政党拒否」も現れた。国民と国政の橋渡しをする公党の原点が忘れ去られている。それで「非常時の今は、経験が頼りになる」と言われても困る。

 特に民主は、知事選での候補擁立を次々に断念した。東京、北海道、三重以外は相乗りか不戦敗だ。道府県議選の出馬予定者も八百人に届かず、自民の六割程度にとどまる。公認の返上、推薦の辞退が相次いでいる。

 被災住民への配慮や電力不足から、選挙運動の自粛ムードが広がっている。訴えまで萎縮しないでもらいたい。避難のため、被災地支援のため、選挙権を持つ地元を離れざるを得ない有権者は多いだろう。低投票率が心配だ。ネット選挙が解禁されていたなら、とつくづく思う。

◆助け合いは自治の基本

 被災地の避難所では、住民の絆が強まっている。助け合いは自治の基本でもある。総務相や岩手県知事を務めた増田寛也氏は「復興プランは地域主体で作るべきだ」と強調する。自治を強くすることは住民の安心・安全につながる、と大震災が教えてくれた。こんなときだからこそ、自らの地域のこれからを見つめ、投票に行こう。

 

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