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2011年3月31日(木)付

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福島第一原発―長期戦支える人を守れ

津波被害で危うい状態にある福島第一原子力発電所の原子炉を落ち着かせる作業はますます難しく、そして長びく様相を見せている。強い放射能を帯びた水が建物の地下などに大量にたま[記事全文]

被災地の雇用―若者を再生の主役に

厳しい生活が続く被災地の人たちにとって、復興に向けた一歩を踏み出すことが希望へとつながる。そのためには、これから先のくらしを支える「仕事」の役割が大きい。家族や家を奪っ[記事全文]

福島第一原発―長期戦支える人を守れ

 津波被害で危うい状態にある福島第一原子力発電所の原子炉を落ち着かせる作業はますます難しく、そして長びく様相を見せている。

 強い放射能を帯びた水が建物の地下などに大量にたまって作業の邪魔をする一方で、原子炉や核燃料の貯蔵プールを冷やすには、水を注ぎ続けるしかない。だが、注げばそれだけ汚染された水があふれ出す。

 1〜4号機の現場で、そんなバランスが必要なきわどい作業を根気よく続けながら、放射性物質が外に出るのを抑え込んでいく。それが目下の課題である。時間がかかることを覚悟しなければならない。

 枝野幸男官房長官も「温度がある程度、安定的に下がるまでは相当な時間がかかる」と語った。

 長丁場の闘いとなれば、この際、しっかり態勢を立て直すことが求められる。なにより忘れてならないのは、現場で働く人たちのことである。

 その過酷な状況の詳しい様子が、今週になって原子力安全・保安院によって明らかにされた。

 発電所の敷地内は高濃度の放射性物質が飛び散っているため、作業する人たちは外気の入らない特別の建物に集まり、床で毛布にくるまって雑魚寝している。食事は1日2回、朝は乾パンと野菜ジュース、夜も非常食のご飯と缶詰だ、という。

 放射能レベルが高く、がれきも散らばる場所で危険に直面しながらの作業である。現場を離れた時くらいは休息を十分にとれるよう、東京電力と政府は手を打ってほしい。

 それは、二次被害を防ぎ、原子炉を早く安定させることにもつながる。限度を超えた疲れは、作業ミスの引き金になりかねない。

 今後、汚染水の移しかえなどの作業が増えれば、さらに人力が要る。多くの人に働いてもらうには、被曝(ひばく)線量を極力抑えることと、十分にリフレッシュできる環境を整えることは必須の条件である。

 教育や訓練によって作業ができる人を増やすことを、早めに考えておく必要もあるだろう。

 放射性物質が大気や海に出るのをできる限り抑えながら、効率的に作業を進めるための方策を編み出すことも、今後の重要な課題だ。それには、内外の知恵を総動員したい。

 四つの原子炉施設で同時並行に、不安定状態の制圧をめざす、世界でも例のない難作業である。

 国内の技術者や研究者はそれぞれの立場で持てる力を発揮してほしい。関連学会もシンクタンク役を果たすべきだ。米国をはじめ、原子力分野の経験が長い外国から支援もある。力をあわせて立ち向かいたい。

 長い闘いは総力の闘いである。

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被災地の雇用―若者を再生の主役に

 厳しい生活が続く被災地の人たちにとって、復興に向けた一歩を踏み出すことが希望へとつながる。そのためには、これから先のくらしを支える「仕事」の役割が大きい。

 家族や家を奪った津波は、大切な仕事の場も押し流した。福島第一原発から20キロ圏内の人たちをはじめ、住み慣れた地から離れざるをえなかった人もいる。この先、どう生計をたてるか。働く場を失って、途方に暮れている人たちは少なくない。

 政府は、休業する企業に人件費を支援する雇用調整助成金や失業手当などについて、使い勝手をよくする措置をこうじている。

 だが、ようやく開いた各地の労働局やハローワークに足を運ぶことすらむずかしい状況だ。さまざまな行政サービスの手続きを避難先で一度に済ませられるようにする「出前行政」を強化してほしい。

 とりわけ心配なのは、この春高校や大学を卒業して就職する予定だった若い人たちの働き場だ。

 地元の重要な就職先だった沿岸部の水産会社や商業施設は損壊がひどく、再開のめどすら立たない。被害をじかに受けていない職場でも「注文が急減した」といった理由で、内定を取り消すところが出始めている。

 被災地が喪失感から立ち直り、明日へと歩き出すためには、まだ時間がかかりそうだ。しかし、復興への原動力として、若い人たちのエネルギーは欠かせない。「働いて対価を得られる」場をつくることは、なによりその支えになるはずだ。

 さまざまな事情で地元を離れられない人もいる。被災地に雇用の場を生み出すことが重要だ。

 政府の検討会議では、がれきを片づける臨時の仕事などが考えられている。それも大切だが、若い人をこれからずっと被災地の再生に役立つ人材へと育てる観点が求められる。

 たとえば、各地で不足している自治体職員に登用する。現地で活動するNPOの職員として採用し、その人件費を政府や協力企業が支援するといったやり方も考えてはどうか。

 被災地以外の自治体で実習を引き受け、力をつけさせる。職業上の知識や経験を使って社会貢献する「プロボノ」と呼ばれる人たちが、若者らに技術を伝授するのもいい。

 東武鉄道のように、震災の影響で内定を取り消された若者らを正社員に採用すると発表した企業もある。こうした動きをもっと引き出すため、経済界が連携して新たな採用枠を設けることはできないだろうか。採用活動の延期だけでなく、就職の門戸を実際に広げるために力を尽くしてほしい。

 とらわれない発想で、支援の輪を大きく広げたい。

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