HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 40653 Content-Type: text/html ETag: "ae0a3-16d5-3a175000" Expires: Wed, 30 Mar 2011 03:21:39 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 30 Mar 2011 03:21:39 GMT Connection: close 水産業被害 危機乗り越え漁業の町再建を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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水産業被害 危機乗り越え漁業の町再建を(3月30日付・読売社説)

 大津波に一切をさらわれた埠頭(ふとう)、市街地に打ち上げられた漁船――。

 東日本巨大地震は、東北の太平洋岸に連なる漁業に生きる市町村を直撃した。漁船や市場、加工場など水産インフラが津波に流された。

 漁業関係者の多くが被災し、難を逃れた漁民たちも生活の基盤を奪われ、途方に暮れている。

 基幹産業である水産業が存亡の危機に(ひん)している。その再建抜きに震災復興はありえない。活気あふれる漁師町の灯を消さぬよう国は積極支援すべきである。

 青森から千葉にかけての太平洋沿岸6県は全国の漁業生産量の約25%を占める。中でも東北地方は気仙沼、石巻、女川、塩釜など屈指の水揚げを誇る漁港が多い。

 養殖に適したリアス式海岸はカキやホタテなどの大産地だ。ワカメは宮城、岩手両県で全国の約8割を生産している。

 岩手、宮城両県では、約250漁港が壊滅的な被害を受けた。漁船の損壊は確認されただけでも約2500隻、集計されていない両県の計2万隻も、大半が破損したとみられる。

 影響は消費地にも及んでいる。首都圏の台所である東京・築地市場では、全体の入荷量が前年の同時期に比べ約3割減った。三陸沖を主産地とするサンマは今秋の供給減が懸念されている。

 被害の全容はつかめず、復旧のメドは立っていない。漁港の惨状を見れば、本格復興に数年かかることを覚悟せねばなるまい。

 だが、沖合底引き船や巻き網船が無事だった地域もある。入港可能な近隣の漁港を使い、水揚げの早期再開を目指したい。

 石巻や気仙沼では自治体、漁協、水産会社などが協議会を設立し、再出発へ動き始めた。復興に向けた地元の取り組みを後押しするため、政府は緊急融資などの支援策をまず検討すべきだ。

 中長期的には、災害に強い漁業基地をどう実現するかが課題となろう。その観点から地域全体の復興計画が必要だ。狭い後背地に住宅が密集する現状では、津波のリスクを常に抱えることになる。

 三陸地方は過去の大津波を教訓に、各地に大規模な防潮堤を築いたが、今回の津波は、それも乗り越えた。巨費を投じて堤防などを整備しても限界があろう。

 むしろ高台やビルなど安全な避難先を確保し、住民に避難路を周知させる体制を徹底すべきだ。北海道南西沖地震の被災地、奥尻島では、集落が高台に集団移転した。こうした経験にも学びたい。

2011年3月30日01時05分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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