この国の未来が託されている人たちが、こんな劣悪な環境の下で闘っているとは思わなかった。命懸けの作業に取り組んでいる福島第一原発の東京電力社員や協力会社の作業員たちだ▼朝食はクラッカー三十枚と野菜ジュース。夕食は発熱剤で温める非常用乾燥米と缶詰一つ。飲み水は一日一・五リットルで、シャワーも浴びられない▼夜は、被ばくを防ぐために鉛の入ったシートを敷き、毛布にくるまっての雑魚寝だ。ほとんどの作業員は一週間で交代する。東電の要請を受けた協力会社は作業員をかき集めるのに必死のようだ▼「日当を四十万円出すから」と原発メンテナンス業者から誘われた二十代の男性の話が本紙で紹介されていた。男性は断ったが、高給にひかれて福島第一原発に戻っていく五十代以上の人もいるという▼政府は昨年、二〇三〇年までに十四基以上の原発を新増設する計画を閣議決定。つい最近まで「原発ルネサンス」という言葉がマスメディアをにぎわせていた。「安全」を唱え続けた政府や電力会社トップ、無批判に記事を掲載したメディア。その尻ぬぐいをさせられているのは、こんな人たちだ▼<まったく歴史とは、そのほとんどが人類の犯罪、愚行、不運の登記簿にほかならない>(ギボン著『ローマ帝国衰亡史』)。ヒロシマ、ナガサキに続き、フクシマも人類の登記簿に悲しい名を残した。