HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 29 Mar 2011 01:11:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:節電シナリオを描け:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

節電シナリオを描け

2011年3月29日

 東日本大震災で東京電力が供給力を大幅に失った。福島第一原発は廃炉の道をたどり、安定供給の役割を担えなくなる。原発頼みのエネルギー政策の将来を見据えた節電シナリオを示すべきだ。

◆電力不足

 強制的な計画停電はいつまで続くのか。電力業界の幹部は「当面、原発への依存は困難だ」と、少なくとも向こう一〜二年は避けられないとの見方を示した。

 東電が大震災と定期点検で福島第一、第二原発の十基を、東北電力が女川、東通原発などの運転を停止し、日本の三割を担う原発の発電容量は、その二割以上が減ってしまった。

 現在、電力需要は冬から夏への端境期にあるが、東電はエアコンの使用が急増する夏本番になるとピークの六千万キロワットを賄えない。

 政府は原子力を経済性に優れ、二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーと位置づけ、これに沿って沖縄を除く九電力が原発を主力に据えている。しかし、福島の事故で安全神話は無残にも砕かれ、原発の推進は国民の不安、反発を招いて相当難しくなってきた。

 もはや原発政策の大幅な見直しを前提とした節電は、緊急措置としてやむを得ない。東日本と周波数が異なる西日本からの融通は変換能力に限りがあり、鉄鋼会社などから電気を回してもらっても夏場は一千万キロワット以上も不足する。

 まずは、私たちが電気漬けの日常を、こまめに節電する生活様式に切り替えることが求められる。通勤前の朝八時ごろに集中する温水洗浄便座の電源を断てば全国で原発四基相当分、テレビなどの待機電源を切れば一割節約できる。

 職場の節電も工夫したい。時差出勤したり、自動車などの生産現場の稼働を昼夜逆転すれば、消費時間帯の集中が避けられる。電力不足が生産を停滞させて工場などを海外に追いやり、雇用環境をさらに悪化させてはならない。

 そのためにも、実施直前の発表ゆえに利用者が戸惑うばかりの計画停電を修正し、産業界や国民が共有できる節電シナリオを政府が描いて協力を求めるべきだ。

 東日本大震災の復旧は戦後復興に匹敵する大事業になるだろう。電気は国民生活や経済活動の必需品だ。

 鉄鋼、石炭に資金を集中した戦後復興の傾斜生産方式などを参考に、復興資金を電力に配分する手だての検討も望みたい。

 骨太の節電、復興シナリオを示さずに、電力の供給を絞るだけでは日本の国が回らなくなる。

長期戦覚悟で叡智を

 東京電力福島第一原発事故で、原子炉冷却作業は高レベルの放射性物質の漏洩(ろうえい)で困難を極めている。漏洩防止に全力をあげるとともに、事態打開のため政府は長期戦に備えた対策を打ち出すべきだ。

◆原発事故対応

 事故を終息させるために不可欠の冷却機能回復作業では外部からの通電による電源復旧に全力が注がれた。1〜3号機では中央制御室の点灯にまでこぎつけた。

 冷却用に注入してきた水も機器に障害が出る恐れのある海水から真水に切り替えるなどさまざまな対策をうった。

 それでも次々と困難な事態に遭遇した。3号機の原子炉建屋に隣接するタービン建屋の地下一階で作業員が、放射性物質が含まれたたまり水で被ばくしたことをきっかけに他号機も調べたところ、2号機でも3号機と同じ場所が汚染されていた。しかも、同原発事故で最高の放射線量が測定され、作業は不可能になった。

 原子炉格納容器、さらにその内側の圧力容器が損傷して溶融した核燃料が漏れた可能性もあり、漏洩箇所は特定されていない。今のままでは外から水を注入するほど汚染水が漏れ、作業をいっそう難しくする恐れがあり、従来以上に危険な段階に入ったといえる。

 事故後の推移を振り返ると、事態の進展は常に政府や東電の見通しよりは厳しい方向に向いている。今後も作業のたびに新たな難題に直面するとみられ、原子炉の完全冷却は長期戦・総力戦になることを覚悟しなければならない。

 原発を持つ他国の将来にも深くかかわるだけに、今こそ国内外の原子力関係者の叡智(えいち)を結集し、あらゆる選択肢を検討すべきだ。

 政府は、同原発から半径20〜30キロ圏の「屋内退避区域」の住民に「自主避難」を促している。周辺の放射線量が増えてきたためだ。

「屋内退避で健康リスクはない」と説明する一方、今後の避難範囲の拡大の可能性を否定しない。

 「自主避難」は原子力安全委員会の防災対策指針にある「避難」でも「屋内退避」のどちらでもないあいまいな対応だ。この圏内に残る福島県九市町村の住民約一万人の中からは「中途半端だ」「どうすればいいのか」などと戸惑いや不安が広がっている。

 避難範囲を拡大するかどうかについては将来の補償問題との絡みも予想されるが、情報不足の住民に、自主避難するかどうかの決断の責任まで負わせてはならない。政府の責任で長期戦に備えた明確な方針を示すべきである。

 

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