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2011年3月27日(日)付

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電力不足―計画節電へ政府は動け

政府がちゃんと音頭をとって「計画節電」に踏み切れば、関東圏の停電を回避できるというのに、それをしていない。無責任ではないか。日々の生活や企業の生産活動に及ぼす停電の弊害[記事全文]

みずほダウン―これでもメガバンクか

この大変な時に、いったい何をやっているのか。日本中が「またか」と怒り、あきれているに違いない。メガバンクの一角、みずほ銀行でコンピューターシステムの大規模な障害が起きた[記事全文]

電力不足―計画節電へ政府は動け

 政府がちゃんと音頭をとって「計画節電」に踏み切れば、関東圏の停電を回避できるというのに、それをしていない。無責任ではないか。

 日々の生活や企業の生産活動に及ぼす停電の弊害は目に余る。自家発電の設備能力が足りず、停電時に十分な対処ができない病院があったり、生産中断を余儀なくされる工場があったりと、影響は深刻だ。

 信号機が止まった交差点での事故も、生活の安全を脅かしている。

 一時、3100万キロワットまで低下した東京電力の供給力は、東京湾内の火力発電所の復旧などで、やや回復してきた。それでも茨城県や福島県の火力発電所は損傷が激しく、いまだに復旧の見通しが立ちにくい。

 東電は、休止していた発電設備をもう一度動かすなどして供給力の上積みに努めるという。自家発電している企業からの電力買い取り量を増やすことなども含め、手を尽くさねばならない。だが、そうしても電力不足が長引くことは避けられまい。

 震災に停電が追い打ちをかけている現状を、これ以上放置してはならない。政府は主導力を発揮し、徹底した節電対策へと踏み切る時だ。

 ところが、電力不足対策をめぐる政府の動きは鈍い。節電の「お願い」を訴えるだけにとどまっていて、基本は民間まかせにひとしい。

 東京23区では、節電の動きが広がって、停電の回避にかなり貢献している。それでも、エスカレーターの稼働やオフィス街の照明・空調の状況をみると、節電の努力や取り組みには、ばらつきが目立つ。

 不便を強いられている停電区域からの不満も高まっている。

 電気事業法第27条は政府が強制的に電力使用を制限できることを定めている。石油ショック時には、その発動によって節電が大きな成果を上げたという実績がある。

 電力不足に伴う痛みの分かち合いは、停電より節電という手法を用いるほうが犠牲が少ない。そのことは、過去の経験からも明らかだ。

 産業界や大口需要先に対しては、早期に協議の場を設け、総量規制の水準を定める。電力消費を一定の時間帯に集中させないための工夫も求める。操業時間や就業時間を短縮したり職場ごとにずらしたりする、あるいは休日を増やすといった案もあろう。

 一般家庭向けには、節電のための情報を十分提供したい。ガス利用を増やし、エアコン使用を1台に限る、などの指針も役立つ。ピーク時の電力料金を高く設定して、使用の分散をはかる案も検討に値しよう。

 計画的な節電により、生活と経済活動をきちんと回していく。それが被災地の早い復興にもつながる。

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みずほダウン―これでもメガバンクか

 この大変な時に、いったい何をやっているのか。日本中が「またか」と怒り、あきれているに違いない。

 メガバンクの一角、みずほ銀行でコンピューターシステムの大規模な障害が起きた。振り込みなど100万件を超す資金決済が滞り、一時はすべての現金自動出入機(ATM)やネットによる取引も止まった。

 給与振り込みが集中した25日は何とか乗り切ったようだが、発生から10日余りたっても完全には復旧していない。振り込みでは、たとえば入学金が大学の口座に応急処理で入金されたが、誰が入金したのか分からない、といった問題が残る。

 休日返上で人海戦術によるデータ修復を急ぐというが、被災地をはじめとする日本の大ピンチに、その足を引っ張っている。この状況に早く終止符を打たねばならない。

 支払いが確定しないために不利益を被る利用者が出た場合など、損害の賠償に誠意をもって当たるべきことはいうまでもない。月末は多くの企業の決算期末でもある。混乱の再発は絶対に許されない。

 世間が「またか」と思うのは、2002年4月に富士、第一勧業、日本興業の3銀行の合併で、みずほ銀行が発足したとたんに大障害を起こした記憶がよみがえるからだ。250万件の処理が滞り、復旧に1カ月かかった。その反省は生かされなかったのか。

 前回はシステム統合のテストが不十分だった。今回は震災の義援金の振込件数が一部の支店で所定の枠を超え、システムにエラーが起きたらしい。だが、他の銀行は難なく処理している。システムを調整しておかなかったのは人災だという見方もある。

 処理に手間取り、雪だるま式に影響が広がったのは前回と同じだ。問題のある処理作業を分離して、後続の処理を滞らせずに済むようなシステム構造になっていないためという。

 前回の失敗の教訓を生かすなら、ずっと以前にここを改修しておかなければならなかったはずだ。それができなかったのは、発足時の経営陣が責任をとらず、根本的な問題を長い間放置してきたからではあるまいか。

 出身行ごとの派閥争いがやまず、特定の人脈が経営を牛耳ってきた。内部の駆け引きでエネルギーを消耗し、世の動向に疎くなり、失敗を繰り返す。そんな体質を根本的に改革しなければ、再発防止はおぼつかない。

 西堀利頭取は全国銀行協会の会長就任を延ばすだけで頭取にとどまるのではないかとの観測も周囲にある。利用者は、あいた口がふさがるまい。

 経営者の引責も、再発防止への保証とはならない。だが、そんなことすらできないのに銀行の体質が変わると信じる人が、どれほどいるだろうか。

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