「一票の格差」が二・三〇倍だった一昨年の衆院選挙について、最高裁は違憲状態と断じた。「一人別枠方式」の廃止は当然として、一人の投票価値をできる限り平等にするよう改革を求める。
「一人別枠方式」とは、小選挙区の三百議席のうち、まず四十七都道府県に一議席ずつを割り振り、残りを人口比率に基づき、配分する方法である。人口が少ない過疎地域に配分が増える。
格差を生む大きな原因になっており、最高裁は「できるだけ速やかに廃止」するよう求めた。
二・三〇倍の格差を生んだ区割りについて、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」だと指摘した意味は大きい。過去に三倍を超えない限り、最高裁は合憲判断をしてきたからだ。
二・三〇倍の格差とは、高知3区の有権者一人が「一票」を持つのに比べ、千葉4区の有権者は「〇・四三票」しか持っていないのと同じだ。どう考えても、不平等というしかない。
だが、その不平等状態を是正するには一定の期間が必要で、最高裁はその期間を過ぎてはいないと判断し、違憲状態との結論に至った。高裁レベルでも、三高裁が違憲状態の判決を出していた。
大阪や名古屋など四つの高裁で違憲の判決が突きつけられていたことも重視すべきだ。国会が格差是正を怠っており、憲法上、許される限度を超えていたと判断していた。「立法の不作為」と厳しくたしなめる内容だった。是正は急を要するといえる。
しかし、「一人別枠方式」を廃止しただけでは、格差の根本解決にはならない。区割りをできる限り平等にする必要がある。
昨年の国勢調査で、二倍を超す選挙区が九十七にのぼることが判明した。二倍を超さないためには「四増四減」の定数是正が必要なこともわかった。この結果に基づき、選挙区画定審議会が区割りの見直しを始めている。
ただし、二倍のラインを下回ればよいという安易な見直しであっては困る。今回、「違憲違法」とする反対意見もあった。その最高裁判事が「比率を一対一に近づける努力を尽くすべきである」と述べたのは特筆される。
五倍を超す格差のある参院はもっと深刻だ。政権交代が実現した以上、有権者は自分の持つ一票の重みをより実感していることだろう。「一対一」の追求は、時代の流れではないだろうか。
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