福島第一原発事故の影響による東北、関東の農作物の放射能汚染に続き、東京都では水道水から乳児の暫定規制値を超す放射性ヨウ素が検出された。安全な飲料水確保に全力を尽くすべきだ。
暫定規制値を超す水道水からの放射性ヨウ素は福島県の五市町でも検出されている。東京都では二十三日、都水道局金町浄水場で一キログラム当たり二一〇ベクレルが確認された。
暫定規制値は飲料水に含まれる放射性ヨウ素の放射能の強さとして三〇〇ベクレル以下、特に乳児については一〇〇ベクレル以下と定められている。これに基づき、都は乳児については飲用や粉乳などへの使用を控えるよう求めた。
野菜などの表面についた放射性物質は、洗浄や煮沸などで相当程度除去できるが、水に含まれた放射性物質はイオン交換樹脂が必要で一般家庭ではできない。
都は「規制値は長期間摂取した場合の健康への影響を考慮したもので、代替飲料水がない場合には飲用しても差し支えない」と説明しているが、それだけでは乳児の保護者の不安は解消できない。
汚染が長期化したり、検出量が増える事態に備え、安全な飲料水の十分な確保は緊急の課題だ。
既に都が保育所や医療機関など乳児がいる施設に水道水ではなくミネラルウオーターを利用するよう呼びかけ始めたように、ミネラルウオーターの安定供給が欠かせない。スーパーなどでの買いだめは厳に慎まなければならない。
幸い今回検出された放射性ヨウ素の量は大人が飲んでも心配ないとされる。大人はミネラルウオーターをできるだけ我慢し、乳児用に回すように協力すべきだ。
また、全国の自治体に備蓄用の飲料水の提供を求めたり、飲料メーカーから買い上げることも必要に応じて行い、乳児の保護者が安心できるようにしてもらいたい。
都には金町とは別水系の小河内ダムの水もある。給水能力は都全体の約二割だが、汚染されていないなら乳児に優先的に給水できるようにできないか。応急給水拠点があるため、都が所有する給水車は十台しかない。うち八台は今回の被災地の支援に出動している。近隣自治体からも給水車を動員してもらい、乳児用に優先的に供給する態勢を整えたい。
都は隣接の埼玉県、川崎市と災害時などに水道管を使って飲料水を回してもらう協定を結んでいる。給水量は多くはないが、乳児には行き渡る。この活用も検討する必要がある。
この記事を印刷する