岩手県山田町の避難所で、小学生たちがお年寄りの健康を気遣って、「肩もみ隊」を結成したというニュースを見た。目を細め、気持ちよさそうにしているお年寄りたちと、子どもたちの笑顔に逆に勇気付けられた▼小学生たちも住む家を失って避難している被災者だ。それなのに、困っている人の少しでも役に立ちたいという優しい心根に思わず涙腺が緩んだ。子どもの笑顔は、かじかんだすべての心をとかしてくれる▼巨大津波は子どもたちの命も奪った。死亡者の名が並ぶ名簿を見ると、高齢者の名前にまざって、ゼロ歳、一歳、三歳、四歳、六歳、十歳、十二歳…と、子どもたちの名が▼母親と一緒に遺体が見つかったのだろうか。同じ名字の二十八歳の女性と一歳の男の子の名前に目がとまった。幼子を背負いながら逃げ遅れてしまったのか。想像するのも辛(つら)い▼ニュージーランド地震で恋人を亡くした人の「頑張って」と言わず、ただ手を握ってあげてほしい、という声を小欄で紹介した。励ましと分かっていても「これ以上、どう頑張るの?」と重荷に感じる人が多いからだ。代わりに静かに広がる「顔晴(がんば)ろう」という言葉を添えたい▼被災地では遅れた卒業式を挙行した小中学校もあった。いまは悲しみに耐える被災者の間にも、晴れ晴れとした笑顔が広がる時が来る。その時まで私たちは全力で支えていく。