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天声人語

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2011年3月24日(木)付

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 ある土地になじめば「水に慣れる」といい、しっくりこなければ「水が合わない」という。全国から集まる新住民になじんでもらう努力が実り、首都の水がまずいというのは昔話になった。「東京水(すい)」のペットボトルも売られている▼努力に冷や水を浴びせる報である。東京23区などを賄う浄水場の水道水から、基準を超える放射性ヨウ素が検出され、都は放射線に敏感な乳児に飲ませないよう呼びかけた。福島第一原発の事故の仕業らしい▼「長く飲んだ時の健康被害を考えたもので、代えがなければ飲んでも構わない」というから、慌てることはない。しかし、赤ちゃんのいる人は不安だろう。自分をおいても我が子の健康、というのが親心である▼すでに、福島県産のホウレンソウやキャベツなどから放射性物質が見つかり、出荷が止まった。政府は「食べないで」と念を押す。原発の沖でも放射能が検出され、海産物の具合も気にかかる▼原発への放水作戦を指揮した東京消防庁の隊長さんが話していた。「いつもは目の前の人を救う仕事だが、今回は放射能という見えない敵がいるだけ。後ろの国民を救うという、初めての経験でした」。見えぬ敵は空を飛び、雨粒に紛れ、飲食料に忍び込んだ▼水にまつわる凶報に、のどの渇きを覚えてスーパーに走った人はいないだろうか。えたいが知れないゆえに、放射能はその怖さを百倍にも千倍にも膨らます。たばこに酒と、過ぎると体に悪いものはほかにいくらもあろう。取り越し苦労もまたしかり。どうか、賢く怖がりたい。

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