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3月23日付 編集手帳

 作家の泉鏡花は“狂”と呼べるくらい衛生に神経を使った。刺し身は食べない。酒は唇の焼ける(あつ)(かん)を飲み、大根おろしは煮て食べた◆他家を訪問して座敷で挨拶するときは手のひらが畳に触れないよう、猫のように手首を内側に曲げ、手の甲を畳に突いたという。『私の好きな夏料理』という文壇アンケートに〈熱い番茶〉と答えた挿話が残っている◆何もそこまでして…と、普段は誰しも思うのだが、何かの出来事をきっかけに、食べる側の過剰な心配が生産農家を悲しませる場面もないではない。いうところの風評被害である◆福島県の原発事故を受けて、風評被害が懸念されている。野菜であれ、果物であれ、出荷され、売られているということは、食べて安全ということである。スーパーなどの売り場で、鮮度や値段がそう違わなければ被災地の産品をカゴに入れる。そういう形の支援があってもいい◆鏡花先生の徹底ぶりを見習うべきは、農水産物が安全基準を満たしているかどうかを調べる政府機関であって、ほかの誰でもあるまい。理性をもって正しく怖がる――放射性物質への対応はそれに尽きる。

2011年3月23日01時43分  読売新聞)
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