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3月22日付 編集手帳

 堀口大学の『わが詩法』に〈言葉は浅く/(こころ)は深く〉とある。宮城県石巻市の津波で倒壊した家から祖母と孫が9日ぶりに救出されたニュースに、その詩句が重なる◆「将来、何をしたい?」。80歳の祖母を守り抜いた高校1年生の阿部(じん)さん(16)を発見・救出したとき、県警の石巻署員は衰弱した任さんに尋ねたという◆もう大丈夫だ…助かったぞ…生きているんだ…がんばれ…もろもろを込めた「将来、何をしたい?」であったろう。語り口は世間話のように浅く、思いやりは深い。任さんは「芸術家になりたい」、そう答えたという◆これから出動するよ――被曝(ひばく)の危険が待ち受ける原発事故現場の放水作業に向かうとき、東京消防庁の総隊長(58)は妻にメールした。1行の返事が来た。「日本の救世主になってください」。夫が身を捨てて救世主になることを望む妻は、いない。心配していると告げれば、しかし、夫の覚悟が鈍る。ドーンと背中を(たた)いた1行の向こうに、神仏に合掌してすすり泣く人の姿が透けて見える。意は深く…◆「崇高」という言葉は知っていた。意味するところを、いまにして知る。

2011年3月22日00時51分  読売新聞)
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