被災地でガソリンや食料などの不足がまだ深刻だ。支援物資の緊急輸送が急ピッチで進められているが、被災地域は広く、混乱もみられる。十分な物資を網の目に行き渡らせるよう手を打ちたい。
現地では何でも足りない。食料や水、毛布、灯油、医薬品、ミルク、簡易トイレ…。岩手、宮城、福島などに設けられた数百の拠点に緊急物資の輸送が行われているが、拠点からさらに先にある各避難所への輸送がままならない。
阪神大震災と東日本大震災が大きく違うのは甚大な被害を受けた地域が広大な点だ。地震から一週間たっても、避難場所や避難者数の全体像がつかめないほどだ。
さまざまな物資は鉄道や道路、港などを使って、東北地方に運ばれている。自衛隊による空輸もある。一見、物流の“大動脈”が動きだしているように錯覚する。
問題は現地でのガソリン不足などのため、輸送が滞っていることだ。その結果、自治体の施設に物資が積み上げられたままで、点在する孤立集落などに届かないケースが続出している。
山地や谷間が続く地形が多いため、物資を手に入れようと避難所に向かうにも困難を伴う。自宅から数キロも歩いて、おにぎりをもらう人さえ出ている。輸送手段の確保は喫緊の課題といえる。
自治体の人手不足も深刻で、担当者が被災状況を正確に把握できていないケースも多いだろう。寸断した道路の復旧なども急がれる。輸送を担う自衛隊がスムーズに活動できるよう自治体ときちんと連携をしてほしい。
ガソリン不足に対応するため、数百台規模のタンクローリーが向かっているが、拠点から末端までの輸送は時間との闘いでもある。寒い避難生活は、日ごとに体力と気力を奪っていくからだ。
せっかく避難しても、厳しい生活で亡くなる高齢者も続出している。阪神大震災の経験に学び、仮設住宅の手配や設置は迅速に行うべきだ。
首都圏の各地では、燃料や食料の買いだめが今でも起きている。結果的に品不足を招き、被災地の苦難を増大させることにつながりかねない。今は一リットルの燃料、一袋の食料が一人の命を救う瀬戸際だ。不要不急な物資の買いだめは控えてほしい。
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