東京電力の計画停電のお粗末ぶりに怒りを覚える。東日本大震災の惨状を見れば、通勤客も多少のダイヤの乱れは受忍するだろう。それに甘えて、不便を最小限にとどめる努力を怠ってはならない。
JR東日本などの鉄道各社は、十四日朝から計画停電を開始するとの東電の発表を受け、東京郊外の多摩地区や神奈川、千葉、埼玉方面の区間を中心に、始発から運休や間引き運転に踏み切った。
だが、肝心の東電は当日になって実施するのかしないのか迷走、計画停電の時間や地域などの重要情報も錯綜(さくそう)し、通勤通学客がターミナル駅などに集中して大混乱を招いた。
停電すれば混乱することは目に見えている。それなのに鉄道会社の運行情報も大幅に遅れた。東電と鉄道各社は事前調整したのか。原発事故に動転し、行き当たりばったりの計画停電では国民生活をいたずらに混乱させるだけだ。
計画停電とは供給能力が電力需要を下回り、大規模な停電が起きる恐れがある場合、あらかじめ対象地域や時間帯を決め、電力供給を停止する措置をいう。
東電は福島原子力発電所が地震に直撃されて九百万キロワットの発電能力を失った。二〇〇七年の新潟県中越沖地震で運転を休止した柏崎刈羽原発も、なお復旧途上にあり、供給能力は四千百万キロワットの需要に対し三千百万キロワットに落ち込んでいる。
万人単位の死者が避けられない東日本大震災、その直撃によって電力の供給不足に陥った東電の姿を見れば、被害にあわなかった人たちも間違いなく手を差し伸べるだろう。
駅の敷地外まで長蛇の列をつくり、じっと耐えている利用客を見れば容易に理解できる。再び混乱を招かぬよう周到で長期を見据えた計画を求める。
今、急ぐべきは被災者に食料や暖房機などを動かす電気を、そして警察、消防、自衛隊の救助活動の最前線にガソリンなどを速やかに送り込むことだ。被災地周辺では給油ポンプを動かす電気すらも事欠く出荷基地が少なくないという。東電にとどまらず電気を節約して被災地に優先的に回し、救助活動を支援しなければならない。
国民一人一人が、宮城、岩手、福島県などの被災地に思いをはせ、節電に協力することが被災者に安心を送り届けることになる。
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