HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 39766 Content-Type: text/html ETag: "126ec-1cf3-5adcd3c0" Expires: Sat, 12 Mar 2011 22:21:36 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 12 Mar 2011 22:21:36 GMT Connection: close 東日本巨大地震 原発事故の対応を誤るな : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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東日本巨大地震 原発事故の対応を誤るな(3月13日付・読売社説)

 ◆政府と各党は救援・復興策を急げ

 東日本巨大地震の、すさまじい被災状況が次々明らかになってきた。

 壊滅的な被害を受けたのは、岩手、宮城、福島など東北各県の太平洋岸の街だ。

 地震の数分から数十分後に大津波に襲われ、住宅など建物のほか自動車、船舶までが内陸に押し上げられた。火災も発生し、宮城県気仙沼市は、中心部がほぼ全滅した。南三陸町では約1万人が行方不明になっている。

 ◆大切な安全優先の原則

 中でも懸念されていた東京電力福島第一原子力発電所1号機のトラブルは、爆発で外壁が崩れる衝撃的展開をみせた。その光景を映し出したテレビ映像に、戦慄を覚えた人は多かったことだろう。

 原発は、安全確保のため、三重の構造をしている。最も内側は原子炉で、それを格納容器が覆い、外側に原子炉建屋がある。

 爆発したのは最も外側の建屋部分だ。格納容器から漏れたガスが原因だが、格納容器は無事で機能も維持できているという。

 ただ、1号機では地震直後から冷却機能が作動していない。冷却水も減り、核燃料が水上に露出して熱で溶融したらしい。国内初の深刻なトラブルだ。

 爆発という異常事態に、東電は、原発のすぐ近くにある海水を炉内に注入し、完全に冷却することを決断した。塩分などを含む海水の利用は運転再開を困難にするため東電はためらってきた。

 安全最優先の原則に照らせば、もっと早く決断することもあり得たのではないか。

 ◆問われる危機管理能力

 微量とは言え、放射性物質が外部に漏れるなど、国民は不安にさらされた。原発周辺の住民も、避難を強いられ、不便な生活を続けている。

 政府の情報提供のあり方も問われている。爆発は、12日の午後3時半過ぎに発生した。枝野官房長官が記者会見して爆発を公式に認めたのは約2時間後だ。放射性物質の大量漏れはなく、格納容器の爆発でもなかったことを発表したのは5時間余り後だった。

 これでは、遅すぎるのではないか。しかも、最初の記者会見で枝野長官は、放射能の放出量や避難情報を含め、重大な情報には全く言及しなかった。

 東京電力と経済産業省の原子力安全・保安院は、連携して福島第一原発1号機のトラブルに対処しなければならない。

 今回の地震が想定以上だったとしても、危機管理の甘さは厳しく問われるべきだ。

 原子力発電は日本の基幹的な電力源となってきた。だが、爆発の衝撃は、その位置づけを足元から揺るがしかねない。

 1979年の米スリーマイル島原発事故では、放射能による外部への影響はなかったが、炉心が溶融する異常事態に、原発への逆風が吹いた。この事故以降、米国では原発の新設が止まった。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発で86年に起きた事故では、原子炉から大量の放射能が世界中に放出された。事故の際の消火活動などで30人以上が犠牲となったほか、放射能で甲状腺がんになる患者が続出し、欧州を中心に、反原発運動が盛り上がりを見せた。

 原発事故を防ぐ体制を強化すべきだ。対応を誤れば、国内外の原発活用が危うくなる。

 ◆孤立住民救出に全力を

 死者・行方不明者数も増え続けている。なお大勢の人が学校施設やビルの屋上、あるいはがれきの下などで救助を待っている。

 自衛隊や消防などが本格的な救助・救援活動を開始した。菅首相は全国の駐屯地から総動員態勢で臨むとし、5万人の自衛官を被災地へ送り込む方針だ。

 避難住民が求めているのは、家族や友人らの安否情報だ。一刻も早く再会できるよう、警察や行政は手を尽くしてほしい。

 戦後最大級の非常時に、国の総力を挙げて災害対策に注力する必要がある。

 与野党党首会談で野党各党は、改めて全面協力する考えを示し、国会の当面休会や統一地方選の一部延期などを提案した。

 最も急がれるのは、災害から復興するための大規模な補正予算の編成である。

 2010年度予算の予備費は、2000億円ほどしか残っていない。これでは本格的な対策を実施するのに全く足りない。

 与野党は財源の確保を含め、補正予算の具体案を早急にまとめなければならない。

 国会でできるだけ早く議決し、実施に移すべきだ。

2011年3月13日01時12分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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