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3月12日付 編集手帳

 幾度となく腕時計の文字盤に目を走らせながら、東京都内の職場でこれを書いている。青森市・仙台市17時39分、福島市・水戸市17時41分、東京都17時44分…各地に日の入りの時刻が迫っているが、余震は収まる気配がない。書棚に積み上げた本が、いままた揺れている◆震源に近い被災地は停電したままである。日没によって真っ暗になれば、土砂崩れや火災から避難するのにも危険が増し、救援活動もままならないだろう◆きのう午後、東北から関東まで広い地域を襲った地震は日本では観測史上最大の規模という。犠牲者の数は見当もつかない◆言葉で世渡りをする手前、「言葉にならない」は禁句にしてきたが、その光景をどう言い表そう。川を(さかのぼ)った津波が田畑を()み、家屋や車を押し流す。「まさか、あの家に人が…」「まさか、あの車に人が…」と、“まさか”の一語だけを馬鹿(ばか)のように胸のなかで繰り返している◆窓の外はすっかり闇に沈んだ。倒壊した家屋の下で、あるいは泥流に孤立して、どれほどの数の人が恐怖と、寒さと、空腹に耐えているだろう。祈ることしかできない身が、もどかしい。

2011年3月12日01時04分  読売新聞)
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