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リビアの反体制派とカダフィ政権の争いは各地で犠牲者が増え、内戦の様相である。このまま血みどろの戦いになるのは避けなければならない。国際社会は、人道的な監視の受け入れをカダフィ政権に求めるべき[記事全文]
世界規模での競争が激しさを増すなか、証券取引所も生き残り策として統合を進める時代になった。東京証券取引所と大阪証券取引所が統合に向けて動き出した。2012年にも実現を目[記事全文]
リビアの反体制派とカダフィ政権の争いは各地で犠牲者が増え、内戦の様相である。このまま血みどろの戦いになるのは避けなければならない。国際社会は、人道的な監視の受け入れをカダフィ政権に求めるべきだ。
東部で始まった蜂起は当初、首都まで一気に広がった。だが、カダフィ政権は空軍機や戦車を繰り出し、容赦のない反撃に転じた。反体制派の国民評議会は「空爆を防ぐ必要がある」と訴え、リビア上空に飛行禁止空域を設けるよう国際社会に求めている。
国連安全保障理事会や北大西洋条約機構(NATO)も、その議論を始めた。安保理は先月、リビア制裁決議を全会一致で採択したが、その時は飛行禁止まで踏み込んでいない。
飛行禁止空域の設定は、軍用機による監視によって、相手国が空軍力を使うことを強制的に阻むのが目的だ。湾岸戦争後のイラクや、旧ユーゴスラビア紛争で前例がある。反体制派や少数民族を保護するためだった。
飛行禁止空域を宣言することは、相手国の制空権を武力で奪うことを意味する。ゲーツ米国防長官も「リビアの防空態勢の破壊から始まる大がかりな軍事作戦になる」と話す。リビア軍が反撃するのは必至だ。実施は簡単でないうえ、当事国の間で新たな国際紛争を招く恐れが大きい。
実際、湾岸戦争後のイラクへの場合は米軍がイラク軍機を撃墜し、地上施設を攻撃して、戦闘が繰り返された。
国際社会の反応は割れている。英仏両国は前向きだが、中国とロシアは慎重だ。アラブ連盟はアフリカ連合と協力して検討する方針だが、NATO諸国でもトルコは否定的だ。
米国のクリントン国務長官は「米国ではなく国連の決定が重要だ」と述べている。欧米主導の軍事介入は、アラブ世界の反米感情をあおることになるからだろう。
リビアの場合、民間人への危害を防ぎ、戦闘から保護することが急務だ。民衆への攻撃の有無や、数十万人ともいわれる国内避難民の居場所を確認する必要がある。
そのために国連安保理はまず、軍事的な攻撃を伴わない人道目的の監視飛行を受け入れさせる決議をしてはどうか。政権側も従うべきである。
これならば、安保理も一致できるのではないか。監視の結果を公開することは、虐殺など戦争犯罪の防止にもなる。人道監視の必要性は、湾岸戦争の後から論じられてきた。今回はその新しいルールを作る機会になる。
カダフィ政権も国連の人道調査チームは受け入れると回答している。さらに人道監視の飛行受け入れを要求する意味はある。国連事務総長特使に任命されたハティーブ元ヨルダン外相は、政権の説得に努力してほしい。
世界規模での競争が激しさを増すなか、証券取引所も生き残り策として統合を進める時代になった。
東京証券取引所と大阪証券取引所が統合に向けて動き出した。2012年にも実現を目指すという。
金融・投資技術の急速な発達や、グローバル化の進展を背景に、世界の取引所は再編の波にもまれている。日本が取り残されれば、企業の設備投資などの資金調達が海外より不利になり、雇用にも響きかねない。国内の証券取引を結集し、競争力を高める努力が不可欠だといえる。
先にニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するNYSEユーロネクストとドイツ取引所が合併協議入りを発表した。ロンドン証券取引所はカナダ・トロントの証券取引所運営会社との統合に乗り出している。
欧米を軸に盛り上がる再編の背景にあるのは、規制緩和とコンピューター技術の進化を受けた私設取引システム(PTS)の台頭だ。低い手数料で高速な売買にも耐えられるPTSは大口投資家など取引所の「お得意先」を奪って急成長している。
NYSEなどは通常の現物株取引ではもうからなくなり、先物やオプションなど金融派生商品(デリバティブ)の取引、あるいは金融商品の売買に絡む代金決済などが生き残りへの切り札となっている。
日本では既存の取引所のシェアがなお大きく、収益的に追い込まれるほどではない。だが、拡大が見込まれるデリバティブや、温室効果ガスの排出量取引などの新分野に、国内でいくつもの取引所が分立するまま対応するのでは国際競争に取り残される。
証券取引所は、コンピューターシステムが威力を発揮する巨大な情報装置産業になりつつある。規模が小さければ戦略的な拡大投資もままならない、という問題も抱えている。
東証は現物の株式や債券の国内取引で圧倒的な存在感がある。一方、大証は生き残りをかけてデリバティブ取引を拡大してきた。両者の統合は日本の資本市場の強化に必要だ。
東証は株式の売買代金で上海証券取引所に逆転された。成長著しいアジアなど海外の取引所と連携を進めるにしても、まずは国内がまとまることが先決であることは論をまたない。
東証、大証のほか、名古屋、福岡、札幌に証券取引所がある。地域経済を活性化するために取引所を維持したいという声も地元には根強く、従業員の雇用問題など解決しなくてはならない問題は残っている。このため、再編は進んでこなかった。
しかし、世界的な統合の流れのなかで、変革が求められている。力強い取引所を築くため大胆に行動しなければ、衰退は避けられない。