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3月10日付 編集手帳

 選考委員の丸谷才一さんが寄せた選評の一節を、今も記憶している。〈文辞がときどきガラが悪くなるのには閉口するが、鼻をつまんで読めば近来の好読物…〉◆7年前、読売文学賞(研究・翻訳賞)に選ばれた谷沢永一さんの近代文学論争史『文豪たちの大喧嘩(おおげんか)―鴎外・逍遥(しょうよう)樗牛(ちょぎゅう)』(新潮社)を評した一文である◆某研究者の著作を〈珍無類の殴り書き〉と斬って捨て、某哲学者の学理を〈単なる()理屈〉と突き放すあたりが、“鼻をつまむ”箇所かも知れない。博覧強記の学識に裏打ちされた毒舌が谷沢評論の魅力だろう。ベストセラーになったエッセー『人間通』など数多くの著作をもち、保守派の論客としても活躍した谷沢さんが81歳で死去した◆青春の昔からつづいた開高健さんとの交友は、文壇の伝説になっている。開高さんの求めるものは物心すべてを与え、することはすべて許し、「無私の献身、無尽蔵の友情の濫費(らんぴ)」(劇作家・山崎正和氏)と評された◆谷沢さんは生前、「開高没後は余生」と語っている。えろう身の詰まった余生やないかい――天上で迎える友の声が聞こえてきそうである。

2011年3月10日01時27分  読売新聞)
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