HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 09 Mar 2011 23:11:27 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:農の地域主権 “黒船”も扉をたたくよ:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

農の地域主権 “黒船”も扉をたたくよ

2011年3月10日

 市場開放を迫る環太平洋連携協定(TPP)と表裏一体の農政改革。守りと攻めの間を迷走する政府の方針に、現場の不安は募る。この際、農の地域主権を大胆に進めてみてはいかがだろうか。

 政権が代わっても、猫の目農政は変わらない。そもそも民主党が鳴り物入りで導入した農家戸別所得補償制度。その趣旨は、規模の大小にかかわらず、すべての農家が安心して生産を続けられるように、ではなかったか。「担い手」と呼ばれる大規模農家への集中支援に一度は踏み出した自民党農政からの大転換ではなかったか。

 昨年三月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では、兼業農家や小規模農家を含む意欲あるすべての農家が将来にわたって農業を継続し、経営発展ができる環境整備をうたっている。ところが十月、菅直人首相がTPPへの参加を打ち出すと、突然風向きが変わり始めた。競争力の強化、向上が必要だという声が高まった。

 先月末、農政改革の素案を示した首相直属の「食と農林漁業の再生実現会議」では、「攻めの担い手」という“新語”が飛び出した。耕作面積二十〜三十ヘクタール以上(平均約一・三ヘクタール)の大規模農家をそう呼んで、予算を集中すべきだという考え方が浮上した。

 TPPに参加して関税が撤廃されれば、いや応なしに、日本農業は自由競争にさらされる。だから競争力強化に切り替えるということだろう。大規模集約化、担い手強化に向かうのはいいとして、このように政府の都合で二転三転が続いては、生産現場はたまらない。不安は臨界に近づいている。

 高齢化が進む中、国の方針が定まるのを待ちきれず、岩手県花巻市笹間地区の農家は、独自の営農再生会議を組織して、水田ビジョンづくりに乗り出した。五百六十世帯が耕す千五百ヘクタールの水田を、五十経営体、三十ヘクタール単位に集約し、生産コストを圧縮しつつ、特産品作りや直売にも取り組む構想だ。

 農産物も一個のいのち。生産の条件は地域によって本来千差万別だ。何をどう作って、だれにどのような形で売るか−。農のビジョンは、農協や自治体がコーディネーター役になり、消費者や流通の知恵も借りながら、地域の人が地域で定めるべきではないか。国はそろそろ視点を据えて、このような地域戦略の策定と実現をサポートすべきではないか。

 TPPという“黒船”が、農業の地域主権の扉をたたく。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo