大型連休をずらして取る「休暇分散化」について、不評だった当初案を見直して開かれた各地の意見交換会が終わった。地方の活性化になると期待される半面で、地域分けが実施の壁になっている。
二月に開かれた中部ブロックの意見交換会。銀行を代表して出席した委員は「地域順に銀行が休むと、地域間の送金や手形の決済が滞る。特に中小企業に及ぼす影響は大きい」と、ブロック単位の休暇の分散化を危ぶんだ。
昨春発表された政府案は、国内を五ブロックに分けて春と秋に五連休が取れるよう祝日法を改正。順番に時期をずらして休日の分散化を図るという内容だった。しかし、経済界や労働界、教育界、有識者らによる休暇改革国民会議では、この案に首をかしげる向きもいた。内閣府の世論調査の結果はさらに明快で、分散化賛成が28・1%だったのに対し、反対は56・1%もあった。
その反対理由には「一斉でないとかえって休めなくなる」「経済活動に影響が出る」「五ブロックに分けるのに抵抗がある」など。休暇取得への拒絶というより、全国を地域分けすることへの不安や不信が目立った。
休暇分散化は、日本の停滞感を打ち破ろうと、政府が昨年閣議決定した新成長戦略の中の「観光・地域活性化戦略」の一つである。少ない予算で観光需要を増やし、観光地の混雑緩和や料金抑制、雇用拡大、地域振興などが期待される。立案自体は悪くない。
民主党内では不評だった当初案を、季節を秋のみとし、地域も三ブロックに減らす修正を試みている。ゴールデンウイーク、お盆休み、正月休みはすでに定着しているからだ。二月から三月にかけて開かれた地方ブロック意見交換会でも、秋の十月に絞って五連休を取る案は、ほぼ好意的に受け止められた。唯一、足かせになっているのがブロック化といっていい。
さらには「まずは観光ありき」が先走りしすぎているのも気になる。どこもかしこも金太郎あめみたいな地方の観光の現状。「有給休暇をきちんと取れるようにすることが先決ではないか」と指摘する人も多い。長期休暇の先進地は欧州だが、日本は日本型を考え出せばいい。
休みは、人びとにゆとりと潤いを与える権利といってもいい。だから、官主導の休日改革には批判も出ている。国民の意見をじっくり聞き、納得を得てから実施してほしい。
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