熊本市のスーパーのトイレで男が三歳女児を死なせた。人の出入りの少ないトイレが、安全の死角になっていた。自分で身を守れない子供たちのために、大人が街の死角を減らす努力をしたい。
両親とスーパーに買い物に来ていた清水心(ここ)ちゃん(3つ)は午後七時半ごろ、一人でトイレに行き凶行に遭った。防犯カメラには心ちゃんを追い掛けるようにトイレに入る山口芳寛容疑者(20)とみられる姿が写っていた。
スーパーやホームセンターは、家族連れも多い。ただ、不特定多数が出入りする施設でも、トイレは人目が少ない。子供の安全の死角になっていた。容疑者はスーパーで約四時間前からうろつき、トイレ近くの椅子に座り通路を見ていたという。人手はかかるだろうが、子供が多く訪れる施設側には巡回などの手だてができなかったか、対策の検討をお願いしたい。
警察庁によると、二〇〇九年は四十八人、〇八年は八十九人の未就学児が犯罪に巻き込まれ死亡している。未成年者全体では百人を超える。十三歳未満児が被害者となった暴力的性犯罪は、減少傾向とはいえ毎年千件超だ。
街には安全の死角が潜む。子供たちが被害に遭う場所は駐車・駐輪場、道路上、共同住宅、一戸建て住宅などで全体の七割になる。人目が少ない場所が危ない。共同住宅はエレベーターや物陰が死角になる。子供連れで深夜に飲食店に行く人も目につくが、夜間利用はさらに注意が必要だろう。
犯罪発生は下校時間と重なる午後に多いが、登校時も発生している。男の子でも小さな子は被害者になりうる。小学生たちが持つ防犯ブザーに「助けて」と女性の声を出す商品が出た。電子音が氾濫する社会で、警報音に大人が気付きにくくなっているようだ。
新入学の時季。小学生になる子と保護者で通学路を歩き、危険箇所や街灯の状況などを確認して防犯マップを作ることを勧めたい。
東京都杉並区では、学校などから寄せられた不審者情報を保護者などにメール配信するサービスを〇四年から始めた。多い年度で八十五件の情報が配信され、一万九千五百人が利用する。保護者からの情報提供もあり、地域で防犯を担っている。取り組みは各地に広げるべきだ。
子供を守ることは大人の責任だし、子育てを社会で支えたい。死角はなくすことは難しいが、地域や家庭の取り組みで一つ一つ減らすことはできるはずだ。
この記事を印刷する