HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 10 Mar 2011 01:12:31 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:近代的なビルに囲まれた隅田川を上る水上バスを、防空ずきん姿…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年3月10日

 近代的なビルに囲まれた隅田川を上る水上バスを、防空ずきん姿の子どもたちが雲の上から悲しそうに見下ろしている。東京大空襲・戦災資料センター(東京都江東区)に展示されている絵には「もっと生きていたかった」という題が付けられていた▼戦後、ストリップ劇場での男女の人間模様をユーモアたっぷりに描いた画家おのざわさんいちさんの作品だ。空襲後、おびただしい焼死体を片付けた経験から惨状を描き続けた▼惨禍を風化させず、次代に語り継ぐ場として、民間の資料センターが開館したのは二〇〇二年三月。被災直後の写真や絵画、焼夷(しょうい)弾など数多くの資料が展示されている▼本来、こうした資料は〇一年に墨田区内に開設されるはずだった東京都平和祈念館に収容される予定だったが、日本の加害の歴史など展示内容をめぐり意見が対立、計画は一九九九年から凍結されている▼戦争体験談の証言を記録した三百三十人分のビデオも、著作権の問題から活用されず倉庫で眠ったままだ。十万もの民衆がわずか一晩で虐殺された戦災の地になぜ公的な施設がつくられないのか、不思議でならない▼資料センターで昨年開かれたおのざわさんの空襲画展のタイトルは「忘れてたまるか」だった。きょう十日で東京大空襲から六十六年を迎える。忘れてたまるか、という気概を持って風化にあらがい続けたい。

 

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