国会議員に与えられる特権は数多い。国会の会期中、所属議院の許諾決議がなければ身柄を拘束されない「不逮捕特権」もその一つだが、有名なのはJR各社の無料パス▼新幹線のグリーン車も無料で利用できる議員たちも、この座席は適用外となった。きのう、東北新幹線で営業を始めた新型車両E5系「はやぶさ」のグランクラス。先頭車両に十八席だけ設けられた新幹線版のファーストクラスだ▼本革製の高級な座席。アテンダントが飲食のサービスを提供する。値段は二万六千三百六十円で東京−新青森間で通常のグリーン車より五千円高い。初日の下り列車の座席の前売りは、二十秒で売り切れる人気だ▼希少な席だけに国会議員の利用は遠慮してもらいたいと、JR東日本が申し入れたという。三月中はほぼ満席で、しばらくは予約を取るのは難しいかもしれない▼独特のロングノーズが特徴のはやぶさは最高時速三百キロで走り、再来年春には国内最速の三百二十キロで走行する。スピードアップは結構だが、東京駅のホームで開かれた記念式典であいさつしたJR東の大塚陸毅会長の言葉には違和感を覚えた▼「スピードを追うことだけではなくて、快適性、あるいは安全性、さらには環境に優しい新幹線の開発に努めてまいりたい」。鉄道会社のトップが「安全」より「快適」を先に口に出していいはずがない。