HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38915 Content-Type: text/html ETag: "a7b48-1705-f618a540" Expires: Sat, 05 Mar 2011 22:21:42 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 05 Mar 2011 22:21:42 GMT Connection: close 元気な日本映画 銀幕で見る機会を増やしたい : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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元気な日本映画 銀幕で見る機会を増やしたい(3月6日付・読売社説)

 今年の米アカデミー賞は「英国王のスピーチ」が作品賞など4部門で栄冠に輝いた。英エリザベス女王の父で、吃音(きつおん)に悩んだジョージ6世を描いた味わい深い作品だ。

 総合芸術でもある映画は、大切な文化資産である。心に残る映画は、精神を豊かにしてくれる。

 日本の映画界も、活気づいている。昨年の興行収入は2207億円で、1955年に調査が開始されて以来最高を記録した。

 映画館へ足を運んだ人も、ピークだった58年の11億人にこそ遠く及ばないものの、過去35年で最多の1億7435万人に達した。

 昨年は「3D元年」とも呼ばれた。劇場で3D作品の迫力に触れたファンも多かっただろう。

 ベルリン国際映画祭で「キャタピラー」の寺島しのぶさんが、モントリオール世界映画祭では「悪人」の深津絵里さんが、それぞれ最優秀女優賞を受賞するなど、邦画は国際的注目度も高かった。

 しかし、残念なことに十分な上映機会に恵まれない良質の作品もある。芸術系作品を上映するミニシアターの閉館が相次いでいる。かつて芸術映画を支えていた若いファン層の減少が背景にある。

 やはり、映画のすばらしさを次代に伝える映画教育の推進が今後の重要な課題ではないか。

 かつて学校の講堂などで開かれていた映画鑑賞会も、今ではほとんど見られなくなった。

 今の子どもたちは、ネット上の動画やゲームの画像に慣れ親しんでいる。大型テレビでDVDを楽しむ機会も多いことだろう。

 しかし、日常の喧騒(けんそう)や外光を遮断した劇場空間でこそ、周囲の観客と一体感を持ちながら作品と正面から向き合える。映画フィルムならではの画質や音響効果も、劇場でなければ堪能出来ない。

 感受性の豊かな子どもたちに映画の魅力を伝えるためには、銀幕を通じて古今の名作を鑑賞する機会をもっと作るべきだろう。

 学校や自治体で、積極的に取り組んでみてはどうだろうか。

 群馬県のように、郷土出身の映画監督、小栗康平氏を講師に招いて教師を対象とした映像教育の講習会を開催した事例もある。

 映画を収集する地域図書館との連携も考えられる。作品解説など指導に当たる人材も必要だ。

 来月には、初の映画専門の単科大学、日本映画大学が開校する。映画専攻課程を設ける大学も増えている。そのような場で、製作者だけでなく、映画教育の専門家を育成することも大切なことだ。

2011年3月6日01時42分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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