前原誠司外相が、禁じられている外国人からの政治献金受領を認めた。「認識はなかった」としても「政治とカネ」問題の頻発にうんざりだ。わきの甘さを認め国民の納得がいく対応をしてほしい。
政治資金収支報告書によると、前原氏の関係政治団体が二〇〇五〜〇八年に選挙区である京都市山科区の女性から年五万円計二十万円の個人献金を受け取り、前原氏は参院予算委員会で、この女性が在日韓国人だと認めた。
政治資金規正法は外国人や外国法人の政治活動への寄付を禁じている。日本の政治が、外国勢力に影響されることを防ぐためだ。
民主党の岡田克也幹事長は民放テレビで「金額も限られたものだし事務的ミスを大きく取り上げるのはどうなのか」と語ったが、金額の多寡が問題なのではない。
かつて党代表を務めた前原氏は現在、外交の責任者である外相という要職にあり、将来の首相候補でもある。その政治家が外国の影響を受けていると疑われるようなことがあってはならないのだ。
親しい人物の国籍を確認する煩わしさは理解するが、誤りがあれば政治生命を失いかねない。わきが甘かったとの誹(そし)りは免れない。
前原氏は「全体をしっかり調べた上で、どのように判断するかも決めたい」と述べた。まずは献金の実態を明らかにし、外国人の献金と認識していたのかどうか、正直に語らなければならない。
「政治とカネ」をめぐり、前原氏はこれ以外にも脱税事件に関与した人物の関係会社からの献金も発覚し、野田佳彦財務相や蓮舫行政刷新担当相にも、この会社から献金やパーティー券代が渡っていたことが明らかになっている。
小沢一郎元代表の政治資金規正法違反事件でも、国会での説明責任は果たされないままだ。
〇九年衆院選で国民が「クリーンな政治」を掲げた民主党に政権を託したのも、自民党政権時代に頻発した「政治とカネ」の問題に区切りをつけたいとの思いもあったに違いない。同様の問題が繰り返されるのなら、政権交代の意義そのものが問われる。
野党側は外相辞任を求め、民主党内にも辞任は不可避との見方が出ている。政権が弱体化する中での閣僚辞任は、菅直人首相にとって致命傷となるかもしれない。
しかし、対応を誤れば、民主党だけでなく、既成政党や政治全体への不信を加速する。民主党らしいけじめを今こそ示すべきだ。
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