キス・オブ・デス、「死の接吻(せっぷん)」とは、十二使徒の一人、ユダのキリストへの裏切りのキスに由来して「破壊をもたらす交わり」を指す言葉らしい▼例えば『西洋故事物語』より用例を引けば、一九四四年の米ニューヨーク州知事選では、勝った候補が、悪名高き新聞王ハーストの新聞が相手候補を熱心に応援するのを、「あれは(相手候補にとって)死の接吻だ」と表現したという▼ところで、わが国では、既成政党の体たらくでいわゆる「首長新党」が注目の的だ。その両雄、河村たかし名古屋市長と橋下徹大阪府知事はこれまで連携してきたが、最近、路線の違いが目立つ▼昨日、河村新党が過半数を狙う名古屋市議会の出直し選も告示されたが、もはや、河村さんの視線は名古屋でなく「日本」を見ている。東京都区議選や衆院選にも候補を擁立すると、広げる風呂敷が大きくなってきた。同時に、秋波を送る小沢元民主党代表の支持派との連携にも積極的だ▼だが、もう一方の雄、橋下さんは自身の党をあくまで「地域政党」と位置付け。小沢派との連携にも否定的だ。上げ潮とは言い難い既成政党の大物との交わりは、「死の接吻」になるとみている節がある▼先に何を見て、誰と“キス”するつもりか。今後、有権者が統一地方選などで「首長新党」を見極めていく時、それも当然、重要な要素になるのだろう。