HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 01 Mar 2011 20:09:42 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ひょっとしたら今年は大丈夫かもしれない。そんな淡い期待は、…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年3月1日

 ひょっとしたら今年は大丈夫かもしれない。そんな淡い期待は、やはり吹き飛ばされた。鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ…。花粉症の症状が数日前から本格化してしまった▼いつからだろうか、春の訪れを花粉症で知る人が増えた。寒さが緩み、「春一番」が吹いて、草木が萌(も)ゆる季節を前にした高揚感を奪われるのが悔しい▼現代俳句に重点を置いた『ザ・俳句歳時記』では、花粉症は「春」の季語の「生活」の項に独立して分類されている。<銀行へ怪しき身なり花粉症>(高崎和音)<捨てる季語拾ふ季語あり花粉症>(卯月きよ)などを読むと、国民病ともいえるこの症状が、現代人の生活を侵食していることをうかがわせる▼国の特別天然記念物に指定されている栃木県の日光杉並木街道に近い企業系病院で、スギ花粉の症例が初めて確認されたのは一九六〇年代前半だった。アレルギーが発生するメカニズムの解明は進んだが、なぜ現代人がこれほど苦しめられるのかは分かっていない▼「確かなのは文明社会が生み出した何かが、杉の花粉と手を取り合って、人間の免疫をかく乱した、ということだ」(岸本忠三、中嶋彰著『現代免疫物語』)▼花粉症持ちはしばらく、洗濯物を外では干せない。心地よい春の風を家の中に招き入れることもできない。文明が与えた試練と考え、耐えるしかないのか。

 

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