地方議員の調査研究に自治体が支給している政務調査費は、むろん住民の税金だ。なのに説明のつかぬ使途が後を絶たない。領収書の全面公開などは当然だ。あなたの住む自治体は大丈夫ですか。
年五十四回もの音楽鑑賞(川崎市議)、官能小説購入(福岡県議)、ボクシング観戦(長崎県議)…。全国の自治体が議員に支出した政務調査費の使途が各地で問題になっている。これらは二〇〇九年度分のほんの一例だ。
五万五千円の政調費でボクシング観戦した県議は「生死を懸けた真剣勝負の世界を学ぶのは議員活動に有益」と主張したというから、驚くしかない。
一人当たり月三十三万円まで認めている岐阜県議会では、〇九年度の支給総額一億八千万円のうち領収書があるのは二割余の四千万円分にすぎなかった。
四十七都道府県議会のうち四十議会は領収書添付を一円から義務付けて全面公開するようになった。しかし岐阜などは三万円以上に限り、それ以下なら領収書不要としているからだ。市町村でも、領収書を全面公開していない議会はまだ少なくない。
政務調査費は、通常の議員報酬とは別に二〇〇〇年の地方自治法改正で支給が始まった。その名の通り、使途は調査研究に限られるが、具体的な支給範囲や金額は自治体や議会が条例や規程で定めるとしている。住民の代表である議会や議員の良識を信じて裁量に委ねたわけだが、自ら律することができないようにみえる。
支給を廃止したり、積極的に公開する自治体も増えてはいる。長野県松本市議会では、各議員の報告書がインターネットで自由に見られるようにしている。
河村たかし市長、そして大村秀章知事の「改革」旋風に、名古屋市と愛知県の両議会も重い腰をあげざるを得なくなった。ともに一人当たり月最大五十万円。名古屋市議会は領収書の全面公開を決めた。愛知県議会も領収書提出は三万円以上だったのを全面公開とする方向だ。税の使途の透明度を上げることに反対理由はないはずだ。これも情報開示である。
仕事ぶりはどうなのか。報酬は高すぎないか。視察は観光ではないか。地方議員のありさまに、住民が不信感をいかに募らせているかは名古屋だけではあるまい。
四月には全国各地で統一地方選がある。襟を正さねば、という自覚はあるのか。私たち住民が議員たちに問い直す好機だ。
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