北アフリカの政情不安を背景に原油価格が一バレル=一〇〇ドルを突破した。日本には石油危機で得た貴重な教訓がある。原油の調達先を分散化し、省エネ技術に一段の磨きをかけなければならない。
「民衆デモがここまで広がるとは想定外だった」。原油埋蔵量が世界八位のリビアにも民主化要求の波が及んだことに、日本の石油業界は動揺の色を隠さない。
さらに不安なのは、大産油国サウジアラビアへのドミノ現象だ。日本は原油輸入量の九割近くを中東諸国に頼っており、ペルシャ湾に異変が生じれば大動脈が寸断されて、文字通りの「油断」を招きかねない。
資源の大半を海外に頼る日本はどう向き合うべきか。かつての体験を教訓に、過度の石油依存からの脱却こそが求められる。
一九七〇年代、世界は二度の石油危機に見舞われた。産油国が欧米の国際石油資本に支配されてきた油田の開発権などを取り戻そうと原油の禁輸に踏み切り、価格を引き上げたことが発端だった。
日本の自動車業界は低燃費の小型車開発で対抗し、原油の値上がりを省エネ技術で吸収してみせた。小型化に乗り遅れたために、一時は衰退の道をたどった米ビッグスリーとの差を際立たせた。
今回も逆風をビジネスチャンスと受けとめ、ハイブリッド車や電気自動車などの環境技術を存分に駆使して日本経済を勢いづけるくらいの気概を見せてほしい。
だが、一バレル=一〇〇ドルを超える原油高を技術力だけで乗り切るのは容易でない。中東一辺倒を戒め、ロシアなどからも輸入を始めたが、石油危機の教訓である調達先の分散化は進んでいない。
国際エネルギー機関によると、二〇三〇年も原油が最大のエネルギー源の地位を維持し、価格も上昇する見通しだ。政府はこうした予測を基に天然ガスと合わせた自主開発比率40%を目標に掲げた。官民あげて達成すべき課題だ。
一月の貿易収支は原油価格の高騰を背景に一年十カ月ぶりに赤字に転じた。日本の富が産油国に流出し、ガソリンや電気料金などが値上げされて国民にそのツケが回される。経済への影響も最小限に抑えたい。
原油高の克服には省エネに加え燃料も原油から天然ガスなどに切り替える。「日の丸原油」をはじめ、安定供給のルートを手元に引き寄せる。あらゆる策を講じなければ原油高に抗しきれないことを、あらためて確認すべきだ。
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