HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38533 Content-Type: text/html ETag: "39200c-166a-cf472000" Expires: Fri, 25 Feb 2011 20:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 25 Feb 2011 20:21:37 GMT Connection: close イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決(2月26日付・読売社説)

 致死的な肺炎を起こす副作用の可能性を製薬会社は警告し、注意喚起を図るべきだった――。

 肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族らが損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は製薬会社「アストラゼネカ」に賠償を命じる判決を言い渡した。

 その一方で、イレッサを承認した国の対応については、「著しく不合理とは言えない」として賠償責任を否定した。

 副作用死が相次ぐことを予想するのは難しく、対応に著しい誤りはなかったとの判断からだ。

 大阪地裁は、1月に示した和解勧告の所見で、国にも被害者の救済責任があるとしていた。

 それだけに、原告にとっては、今回の判決に納得できない部分もあるだろう。

 世界に先駆けてイレッサが日本で承認された2002年当時、ア社は、副作用が少ないことをホームページなどで強調する一方、間質性肺炎を発症する危険性は公表していなかった。

 発売時の添付文書でも、間質性肺炎は「重大な副作用」欄の4番目に記載されているだけで、「致死的」という説明もなかった。

 判決は、「注意喚起が図られないまま販売されたイレッサには、製造物責任法上の欠陥があった」と断じている。

 イレッサは、医師や患者の間では、副作用の少ない「夢の新薬」との期待が広がっていた。

 判決が指摘するように、イレッサは化学療法の知識・経験が乏しい医師も使用する可能性があった。しかも患者が自宅で服用できる飲み薬のため、副作用への警戒が薄いまま広く用いられた。

 そうした状況であったのなら、ア社はなおさら、詳しい副作用情報を提供すべきだったろう。

 抗がん剤の多くは、副作用を伴う。製薬会社には、新薬の長所ばかりでなく、負の情報である副作用についても、医師や患者に十分に開示する責任がある。そう指摘した判決は、製薬業界への重い警鐘となろう。

 判決は国の対応に“お墨付き”を与えたものではない。副作用情報の記載に関する厚生労働省の行政指導については、「必ずしも万全な規制権限を行使したとは言い難い」と批判している。

 重い病と闘う患者は最先端の薬の登場を待ち望んでいる。

 安全性をおろそかにすることなく、いかに迅速な新薬承認を実現するか。イレッサの教訓を生かさなくてはならない。

2011年2月26日01時27分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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