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2月26日付 編集手帳

 『楢山節考』などで知られる深沢七郎さんの自宅玄関には来訪者向けに注意事項の貼り紙があったという。〈出版は印税パーセントをまずはじめに知らせよ〉の一項もあったと、文芸評論家の山本容朗さんが随筆に書いている◆著作者にとって印税は生計の糧であるとともに、次の作品を準備する営業資金でもある。今川焼き屋を営んで経営の苦労も知る深沢さんには、おろそかにできない項目であったのだろう◆たとえば図書館が新刊ベストセラーを大量に購入して貸し出した場合には、著作者の印税収入が減り、次なる創作の芽を摘むことにもなりかねない◆作家の樋口毅宏さんはきのう発売『雑司ヶ谷R.I.P.』(新潮社)の巻末に、〈公立図書館のみなさまへ〉という異例の“お願い”を掲載した。半年間は貸し出しを猶予するよう求めている。図書館が活字離れにブレーキをかける役割を果たしているのも事実だが、著作者という泉が()れては元も子もない。猶予期間を設けるなり、補償金を著作者に支払うなり、何らかのルールがあっていいだろう◆「文士は食わねど高楊枝(ようじ)」が通じる時代でもない。

2011年2月26日01時22分  読売新聞)
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