首長主導の地域政党が相次いで旗揚げされ、統一地方選の「台風の目」となりそうだ。議会が活性化し変わっていく期待が持てる半面、首長が議会を支配下に置こうとする手法には危うさもある。
地域政党は、戦後間もなく結成された沖縄社会大衆党など各地にあり珍しくはない。しかし今、注目を集めるのは橋下徹大阪府知事の「大阪維新の会」、河村たかし名古屋市長の「減税日本」に代表される首長新党だ。それぞれ大阪市議補選や名古屋市長選で既成政党を破っている。
両者には二つの共通点がある。一つは争点が絞られていること。前者は「大阪都構想」、後者は「市民税減税」の是非を問う。二つ目は首長と議会の対立。政策を実現するため、新党として議会の多数派を目指すわけだ。同調する大村秀章愛知県知事も「日本一愛知の会」を率いる。
首長による呼び掛けは、清水勇人さいたま市長らの「埼玉改援隊」、中村時広愛媛県知事が市長時代に唱えた「松山維新の会」などがある。それぞれが地域の自立を目指す趣旨には賛同したい。さらに広がっていくだろう。
背景には地方議会の硬直がある。議員が既得権益の上にあぐらをかき、何の展望も見えない現状に、住民は絶望している。国会での対決に明け暮れる既成政党への不満も募っていた。そんな住民の受け皿として、新党ブームは必然的に起こったといえる。
心配なのは、首長新党が議会の過半数を占めた場合、議会のチェック機能が働きにくくなり、追認機関になりかねないことだ。首長も議員も公選される「二元代表制」をゆがめる恐れもある。
それでも、かつてのオール与党による“なれあい議会”に戻るよりはましだ。首長新党に対抗する野党勢力が堂々と議論を挑み、議会を活性化してほしい。
各地の首長新党が連携する動きもみられる。地方から国のかたちを変えていこうとする発想には反対しない。ただ、衆院選に候補を立てたり、国会議員が加わったり、中央政局に直接絡みだすと、もはや地域政党ではなくなる。その辺りは有権者も注意深く見ていかなければならない。
「地域政党いわて」「京都党」など、議員や市民主導の地域政党も活動している。議会が強くなれば首長に十分対抗でき得るのではないか。首長と議会。どちらも選ぶのは住民だ。今は住民が自治をつくっていく過渡期とみたい。
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