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リビア騒乱 産油国に及んだ独裁打倒の波(2月24日付・読売社説)

 また一人、民意を()み取れない独裁者の命運が尽きようとしている。

 最高指導者カダフィ氏が41年に及ぶ独裁を続けてきた北アフリカのリビアで、退陣を求める反体制派が掌握地域を広げている。

 軍や警官隊の一部も合流したデモ隊は武装し、内戦の様相も呈し始めた。側近の法相、公安相が離反し、抗議の辞任をする外交官も相次いでいる。政権崩壊は時間の問題とみられる。

 カダフィ氏は、「最後の血の一滴が尽きるまで戦う。天安門事件のようにたたきつぶす」と、1989年の中国の民主化運動鎮圧を引き合いに出し、容赦なく弾圧すると宣言した。

 デモの群衆に治安部隊や外国人傭兵(ようへい)が無差別発砲し、軍用機での攻撃まで加えている。虐殺以外の何物でもない。強く非難する。

 厳しい情報統制のために実情把握は困難だが、死者は800人を超えたとされる。流血の惨事をこれ以上重ねてはならない。

 国連安全保障理事会は、デモ隊への攻撃を即時停止するよう求める声明を発表した。アラブ連盟もカダフィ政権の対応を非難し、会議への参加禁止措置をとった。

 弾圧が続けば、国際社会は制裁を科す必要もあろう。

 カダフィ政権は、豊富な石油収入を使った補助金で日用生活品の価格を低く抑え、国民の歓心を買ったが、他のアラブ諸国同様、貧富の格差や高い若年失業率を改善しようとしなかった。

 何より、体制への不満を口にするだけで投獄・処刑される恐怖政治に、国民の我慢も限界を超えたのだろう。チュニジア、エジプトという両隣の国で起きた政変が、蜂起を後押ししたとも言える。

 リビアは石油の確認埋蔵量が世界8位の産油国である。進出している欧州の石油企業の一部は、治安悪化を理由に操業を停止した。中東産ドバイ原油の取引価格も、石油生産が落ち込む懸念から、1バレル=100ドルを突破した。

 リビアの混乱が長期化すれば、国際経済への悪影響は避けられない。日本も打撃を免れない。

 リビアは民主主義を経験していない。クーデターで王制を倒したカダフィ氏は代議制を否定し、伝統的な部族社会を背景にした直接民主主義を掲げたが、実態は政府も国会もない個人支配だった。

 独裁が終わっても、その後の国造りは困難を極めるだろう。

 独裁体制が倒れたアラブの国々で新たな秩序は樹立できるのか。真の試練はこれからである。

2011年2月24日01時34分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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