菅直人首相と谷垣禎一自民党総裁らとの党首討論が行われた。「ねじれ国会」は予算関連法案の成立が困難な危機的状況だが、討論では事態打開の道筋が見えてこない。政治の怠慢ではないのか。
菅政権二回目の党首討論。前回から二週間という「早期」開催は熟議に向けた前進と受け止める。ただ、討論内容には不満が残る。
二〇一一年度予算案は年度内成立が見えてきたが、予算関連法案は野党の反対に加えて民主党内に造反の動きもあり、衆院での再可決による成立も困難な状況だ。
特に赤字国債を発行するための特例公債法が成立しなければ、一一年度の歳入約九十二兆四千億円のうち四割強がまかなえない。予算執行に支障を来せば、影響を受けるのは国民の生活だ。
今、求められるのはこの難局を乗り越えるために、与野党ともに知恵を絞ることだ。だからこそ党首討論には、党利党略をひとまず脇に置き、大所高所からの議論が期待されていたのではないか。
しかし、今回の党首討論は前回と同じく、衆院の早期解散をめぐる言い合いに終始した。
谷垣氏が「もう一回国民の声を聴き、体制を立て直すしかない」と早期解散を迫れば、首相は「予算も通さずに解散することが、国民にプラスになると思うのか」と反論するという具合だ。
与野党トップ同士の討論を聞いても、目の前の危機を乗り切る処方箋すら見えてこなければ、国民は不安を募らせるしかない。
愛知県知事選、名古屋市長選などの「名古屋トリプル投票」で民主、自民両党の推す候補は惨敗。四月の統一地方選を控え、地域政党の動きも活発になっている。
再び芽生えつつある既成政党不信は、足を引っ張り合う姿ばかりが目につき、道筋を示せない国会の状況と無縁ではない。
国会議員の仕事は立法だ。その使命が果たせていないことを、日本経団連の米倉弘昌会長は「国民のために何もしない。給料泥棒のようなものだ」と批判した。謙虚に受け止めるべきである。
ねじれ打開の好例として一九九八年の金融国会で、小渕恵三首相が野党提案を丸のみしたことがよく引き合いに出される。当時の野党民主党の代表が菅氏だ。
すべてを受け入れる必要はないが、野党提案に耳を傾け、よいものは取り入れる柔軟さも首相には必要だろう。角突き合わせ、貴重な時間を無駄にする余裕はない。
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