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2011年2月24日(木)付

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NZ大地震―一人でも多く救いたい

美しい街が壊れた。日本の若者を含む多くの人々が、がれきの中に取り残され、救助を待っている。ニュージーランド第3の都市、クライストチャーチをおととい、マグニチュード6.3[記事全文]

パキスタン―南アジアの安定に協力を

パキスタンは、隣国アフガニスタンとともにテロとの戦いで最前線に立つ国だ。核不拡散条約(NPT)に入らずに核武装した国でもある。世界の安全に大きな影響を及ぼすこの国からザ[記事全文]

NZ大地震―一人でも多く救いたい

 美しい街が壊れた。日本の若者を含む多くの人々が、がれきの中に取り残され、救助を待っている。

 ニュージーランド第3の都市、クライストチャーチをおととい、マグニチュード6.3の地震が襲った。16年前の阪神大震災を思い起こした人も少なくないだろう。近代都市を直撃した直下型地震の破壊力を、改めて思い知らされる。震源の浅さも、被害を大きくしたとみられる。

 日本からこの街に、大勢の語学留学生や観光客が訪れていた。語学学校が入った6階建てのビルが、ねじれるように崩れてしまったことが、多くの日本人が巻き込まれる不運となった。

 「じしんおきた」。6文字のメールが家族に届いた。暗闇に閉じこめられながら、引率の先生が「落ち着いて」と声をかけ、仲間が「みんなで生きて帰ろう」と励まし合う。若者たちが携帯電話やメールで救助要請や安否を伝え合ったことも、目を引く。他方、かえって来ない返信には不安が募る。

 人間の強さを信じ、祈りたい。

 だが、なんとももどかしい。

 崩壊した語学学校の現場では、捜索が一時中断された。近くのビルが倒壊の恐れあり、との情報も流れた。生き埋めになっても、72時間までは生還可能性は高い。日本時間ならあす朝。余震も続き、状況は予断を許さない。

 被災地全体では、数百人規模で行方不明者が出ているという。要請を受けた日本政府はきのう、国際緊急援助隊を派遣した。地震発生から1日余りで出発できたことは、評価していい。日本のレスキュー技術は高い。被災者の国籍を問わず、全力を尽くさねばならないのはもちろんだが、日本人救助にもその力を発揮できないか。

 それにしても、日本と似た火山の島国で、地震の経験を持つ国だ。備えは万全だっただろうか。

 現地入りした五十嵐大介記者は「まだら状に被害が広がっている」と報告している。ニュージーランドは耐震技術の先進地とされるが、れんが造りの歴史的建造物や、耐震補強がされていなかった建物に、特に被害が集中した様子がうかがえる。

 日本でも学校校舎など、耐震基準を満たさない建物は少なくない。財政難で補強や改修はなかなか進まない。都市部の活断層を正確に把握し、揺れを予測し、十分な対策をとる重要さを、痛感させられる。

 救助、医療から被災者保護、心のケア、生活再建、地震に強い都市の復興へと、神戸同様、現地ではこの先、長い災害後プロセスが始まる。日本が積み重ねてきた知恵で、応援できることも多いはずだ。

 いまは一人でも多くの命を救うために力を注ぎつつ、同じ地震国として学び合うことを、考えてゆきたい。

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パキスタン―南アジアの安定に協力を

 パキスタンは、隣国アフガニスタンとともにテロとの戦いで最前線に立つ国だ。核不拡散条約(NPT)に入らずに核武装した国でもある。

 世界の安全に大きな影響を及ぼすこの国からザルダリ大統領が来日し、菅直人首相と両国間の貿易・投資活動を強化することなどで合意した。

 アフガンのイスラム反政府勢力はパキスタンとの国境地帯を往来し、拠点にしている。2014年をめどに治安権限を現地側に引き渡す米国のアフガン戦略を円滑に実施するためにも、パキスタンの安定は欠かせない。

 しかし、現状はそれにほど遠い。08年の金融危機後に苦境が続く経済は、昨年夏の大洪水でさらに打撃を受けた。国内のイスラム過激勢力によるテロが続発し、治安も悪化が続く。

 菅首相にザルダリ氏は、テロの背景にある貧困の撲滅に意欲を示した。日本側は、インフラ整備や経済改革を後押しする方針を伝えた。だが、この国には国際社会から受ける巨額の支援の多くが本来の目的に回らず、腐敗を助長してきたとの批判も根強い。支援の実施に厳しい検証が必要だ。

 パキスタンの核戦力の問題もある。

 米ニューヨーク・タイムズ紙は最近、パキスタンがこの2年間で配備核兵器を60〜90発から95〜110発にまで増やし、さらに40〜100発分の兵器用核物質を生産したとの、米情報機関などの分析を報じた。

 近く英国を抜き米、ロシア、中国、仏に次ぐ核大国になるとの見立てさえある。パキスタン側は報道を否定するが、実態は秘密に閉ざされている。

 ザルダリ氏は今回、菅首相に原子力協力協定の交渉入りを促した。NPTに未加盟のまま核武装したインドと、日本が進める協定の締結交渉をにらんだ動きだ。協力が進めば、インドはそこで生まれる余力を核兵器開発に振り向けるとの不信感が背景にある。

 もちろん、核関連技術・物質の管理に不安が残るパキスタンと協定を結ぶわけにはいかない。ただ、インドと協定の交渉を進めればパキスタンも同様な要求を出すのでは、との懸念が現実化したことを忘れるべきでない。

 南アジアでの核軍拡を防ぎ、中国も含めたアジア全体の核軍縮・不拡散外交を進めることが不可欠だ。インドとの交渉では、核実験の停止を協定に盛り込むべきだ。それを足場にアジアで新たな核軍備管理の道を模索したい。

 そのためにもインドとパキスタンの関係改善は欠かせない。両国は今月、対話を2年ぶりに再開することで合意した。日本は米国とともに両国関係の改善を強く求めたい。そうした信頼醸成外交の先に、パキスタンの反対が主な原因で停滞する兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の交渉開始への糸口が見えてくる。

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