中東地域が政情不安に揺れる中、二十カ国・地域(G20)が食料高騰や世界経済の不均衡是正に協調して取り組む。だが、具体的な成果を上げるには、多くの高いハードルが残っている。
パリで開かれたG20の財務相・中央銀行総裁会議は、米国のような経常赤字国と中国のような経常黒字国が併存している「世界経済の不均衡」問題について、複数の経済指標を使って相互監視することで合意した。
米国を例にとれば、巨額の経常赤字を続けるには、その裏側で世界から投資資金を集め続けねばならない。しかし米国経済への信頼が揺らぐと資金は集まらず、ドルが下落する。ドルの下落が急激になれば、世界経済は混乱する。
つまり不均衡が続く限り、世界経済に大きな波乱の芽が残ってしまう。この問題は一九八〇年代から懸念されていたが、中国やインドといった新興国が成長し、問題が日米欧の先進国からG20へと広がった。当事者が増えた分、解決は一層難しくなっている。
G20は各国の財政収支や民間貯蓄率、貿易収支を含む対外収支などを参考指標にして、不均衡是正に取り組むことで合意した。一歩前進だが、これから監視対象国を選定し、各国が是正に向けた具体的な政策課題や行動計画をまとめなければならない。
先進国から見れば、中国の人民元のように、経済の実力に比べて為替相場が政策的に低い水準で事実上、固定化されていることも不均衡の一因になる。一方、新興国には先進国の行き過ぎた金融緩和が物価上昇と景気過熱を引き起こしているという不満がある。
まず監視対象国をどう選ぶか。次に具体的な政策課題を検討する段階で、再び先進国と新興国の対立が先鋭化する可能性がある。
加えて、食料高騰が新たな共通の難題として各国を覆い始めた。小麦や食用油など一次産品の価格が値上がりし、中東や新興国では政情不安の一因にもなっている。デフレに悩む日本でも、コーヒーの値上げが発表された。
人口増と経済成長に伴う世界的な需給の逼迫(ひっぱく)、金融緩和を背景にした投機資金の流入など、さまざまな要因が指摘されているが、どう高騰を抑制するか、決め手はまだ見つかっていない。
グローバル化が進む中、食料問題の解決も各国の協調が不可欠だ。緊張する場面があっても、粘り強く緊密な対話を求めたい。
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