HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 16 Feb 2011 23:11:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:とても印象深い裁判がある。地下鉄サリン事件で殺された女性の…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年2月17日

 とても印象深い裁判がある。地下鉄サリン事件で殺された女性の母親が訴えた。「目を開けてください。娘を殺された母はこんな顔をしています」▼ふてくされたように座っていた青年の目が初めて開いた。涙で顔をぐしゃぐしゃにした母親と目が合ったが、動揺が見えたのは一瞬だけだった。「サリンを造ったその両手を切り落としてください」。父親を殺された娘が叫んでも、表情は変わらなかった▼猛毒のサリンやVXガスを製造した土谷正実被告は、当時三十二歳。最高裁第三小法廷で一昨日、上告が棄却され、死刑判決が確定する。「被告の豊富な化学知識や経験なくしては各犯行はなしえない」。判決がそう指摘した通り、教団の武装化を支えた幹部の一人だ▼麻原彰晃死刑囚の「直弟子」を名乗り、反省のかけらもなかったその態度が、最近になって変わったと知って驚いた。極刑を恐れた教祖が、詐病に逃げ込んだと考えるようになったという▼地下鉄サリン事件から十六年。十人の幹部の死刑が確定、上告中の被告は二人だけになったが、生真面目な青年たちがなぜ、無差別殺人を犯したのかという素朴な問い掛けに十分答えるだけの検証がなされたのか心もとない▼サリン事件以降、「罪と罰の座標軸が変わった」(森達也著『A3』)。日本社会を根底から変えた事件が急速に風化してゆくことを憂う。

 

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