日本を代表するギタリスト、B’zの松本孝弘さんが、米音楽界の祭典グラミー賞で最優秀ポップ器楽アルバム賞に輝いた。国技の土俵にまで垂れ込めたこの重苦しさをロックのビートで吹き飛ばせ。
B’zのヒット曲のタイトルを拝借すれば「BANZAI」、そして「ARIGATO」といったところだろうか。
ギターと作曲を主に手掛ける松本孝弘さんと、ボーカル、作詞の稲葉浩志さんのユニットは、一九八八年に活動を始めて以来、Jポップ界の頂点に君臨し続け、シングル、アルバムの総売り上げは約八千万枚(国内歴代一位)に上っている。
ロックの本場、米国での評価も高く、四年前にはロックミュージックへの功績をたたえる「ハリウッド・ロックウォーク」にアジアから初の殿堂入り。エルビス・プレスリーやジョン・レノンらと並ぶ栄誉を受けた。
グラミー賞は、これまでに坂本龍一さんや喜多郎さんら四人の日本人が受けている。しかし、癒やし系のニューエイジ部門などで“和テイスト”が主に評価されてきた。王道のポップ、ロック系、しかも米国の国民楽器とも言えるエレキギターでの栄冠は、五輪のバスケットや陸上短距離でメダルに輝くほどの快挙だろう。
受賞作「テーク・ユア・ピック」は、松本さんと米ギター界の大御所ラリー・カールトンさんとの共作。ラリーさんからの希望で競演が実現したという。それぞれ六曲ずつ作品を出し合って、がっぷり四つに組んだアルバムだ。ジャズとロック、それぞれの個性がほどよく絡み合い、明るく多彩なサウンドが楽しめる。
松本さんだけでなく、クラシックピアニストの内田光子さん、琴奏者の松山夕貴子さん、そしてジャズピアニスト上原ひろみさん所属のバンドが受賞し、ことしのグラミーは“Jラッシュ”の様相だ。それぞれのファンにも、音楽ダウンロードの普及でCDセールスの不振にあえぐ国内音楽業界にとっても、あの坂本九さんの「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」が六三年、米ビルボード誌のヒットチャート一位に輝いて以来の朗報に違いない。
今韓流のKポップが国内を席巻中だが、Jポップもマンガやゲーム同様に、世界に愛される可能性が示された。これを機に、多くのミュージシャンたちに、言葉の壁をも乗り越える勢いで、本場のステージに挑んでもらいたい。
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