アフリカ・スーダンの南部地域が住民投票により北部からの分離独立を決めた。二十年以上続いた内戦で荒廃した国土を再建するには、歓喜に浸る余裕はない。国際社会の支援が必要だ。
スーダンは中央政府がある北部ではアラブ系イスラム教徒が中心で、南部はキリスト教やアニミズムを信仰する黒人系民族が主流。
南北間で一九八三年に内戦が起き、約二百万人が死亡し四百万人以上が難民になり、世界で最も悲惨な民族紛争といわれた。
二〇〇五年に和平合意が結ばれたが復興は進まず、南部では今年一月に分離独立の可否を問う住民投票が実施され約99%が賛成した。中央政府のバシル大統領も「投票結果を尊重し歓迎する」と約束した。七月には人口約八百万人の、アフリカで五十四番目の独立国が誕生する。
これまで南部住民は北部から「二級市民」扱いをされてきたが、国内外に逃れた住民が続々と帰還し、国造りに参画している。
国際情勢にも影響は及ぶ。米国はスーダンが国際テロ組織アルカイダに拠点を提供したとして、「テロ支援国家」に指定しているが、今回、バシル政権が南部独立を容認したことで指定解除の検討に入った。
難問は山積している。スーダン南部はアフリカの中でも最貧地域で、水道や電気、舗装道路などインフラ整備はほとんど手つかず。行政担当者や技術者も十分育っていない。
最大の懸案は石油をめぐる対立だ。南北の境にある油田地帯アビエイでは境界線が画定しておらず、住民投票でも帰属は棚上げされた。中央政府が掘削施設やパイプラインを管理しているが、南部の独立と経済発展に協力すると明言している。油田地帯の分割や利益配分について、南部の新政府と早期合意を目指すべきだ。既に油田開発に投資している各国との調整も必要になろう。
国連は平和維持活動(PKO)を継続し、紛争再発の防止と安定化にあたる。南部の独立を支持した米国、バシル政権と資源外交で結びつきが深い中国、さらにはアフリカの周辺諸国は利害を超えて南北の共存共栄を支えていく責任が問われる。
日本政府は住民投票の国際監視団に要員を派遣した。紛争再燃の懸念が少なくなったときには、より積極的な復興支援を検討すべきだろう。
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